イラスト/ピエール

0世界(ゼロせかい)は、プラス階層とマイナス階層の狭間にある、基点となる世界です。天候の変わることのない空が続く単調な世界で、時間が流れることさえない停滞した世界です。

0世界の中枢にはアーカイヴと呼ばれる遺跡が存在します。これはかつて0世界に暮らしていた種族が建造したとされていますが、詳しいことはわかっていません。現在、アーカイヴを建造した種族は0世界には存在せず、遺跡にはただ「チャイ=ブレ」だけが生きています。

■チャイ=ブレ
イラスト/晏嬰 亮 「チャイ=ブレ」は0世界の――いえ、この世界群すべてが誕生したころより生きているとされる超生命体です。すべてに先んじてチャイ=ブレがあり、アーカイヴはあとから建造されたにすぎません。チャイ=ブレには知性があるようですが、人類とはあまりにかけ離れた存在なため、言語による意思疎通はできません。しかしその分身にして眷属である小生物「セクタン」を通じて、その意思をぼんやりと感じ取ることが可能です。チャイ=ブレの意思とは、世界群のさらなる情報を得たいということです。この謎の存在は、幾星霜にわたり、「すべての世界群の情報(知識)」をつねに求め続けています。

チャイ=ブレは、ディラックの落とし子が成長した姿であることがあきらかになっています。現在、チャイ=ブレは休眠状態にあり、いつか目覚めたあと、壱番世界を吸収するために動き出すとされています。

■アーカイヴ遺跡
イラスト/晏嬰 亮 0世界の中枢「アーカイヴ遺跡」は、チャイ=ブレの御座所にして神殿です。ターミナルの市街地は、アーカイヴ遺跡の上に増築を増築を重ねて建造されているため、市街の「地下」は、今は使われなくなった都市の廃墟が複雑に入り組んだダンジョンのような状態になっています。

都市遺跡からさらに下ると、アーカイヴの深層、チャイ=ブレそのものがその巨体をよこたえている特殊空間「記憶宮殿」に至ります。記憶宮殿内には、ロストメモリーたちの封印された記憶をはじめ、チャイ=ブレが蒐集してきたすべての情報が蓄えられているのです。

また、アーカイヴ遺跡の一画には、壱番世界へと通じる転移門『ラビットホール』が存在し、壱番世界のイングランド郊外へと通じています。

■0世界の変貌
イラスト/新田みのる 0世界はもともと、「チェス盤のような黒と白の盤」がどこまでも続く床面のような地面で形成されていました。しかし世界樹旅団との戦いの結果、世界樹がチェス盤の大地を侵食し、チャイ=ブレと激しく激突した後、チャイ=ブレとともに休眠してしまったあと、0世界の大地は見渡す限りの樹海に変貌を遂げてしまったのです。

樹海には、さまざまな世界群の植物が植生を無視して繁茂しており、大地は土に変わりましたが、土壌と植物以外のものは存在しないようです。現在、樹海には世界樹旅団とともに0世界に侵入したあと、制御を離れたワームたちが生息しており、危険な地域となってしまっています。

■ナレッジキューブ
アーカイヴ遺跡には膨大な量の「ナレッジキューブ」という物質が所蔵されていました。実は、これこそが、何億年もかけてチャイ=ブレが収集し続けた世界群の知識の蓄積なのです。ナレッジキューブはもとはチャイ=ブレの背中に生えた樹木のように見える「知恵の樹」と呼ばれる器官から分泌される物質です。見た目は半透明のゼリー状の立方体です。この中に大量の情報を記録することが可能なのです。

また、ナレッジキューブは、人の強い意志に反応して、その望みを反映してあらゆる物質・エネルギーに変成する物質でもあります(かつて「賢者の石」と呼ばれたものや、聖書に記述のある「マナ」、ギリシア神話の「アンブロシア」などの正体がナレッジキューブなのではとする説もあります)。チャイ=ブレは新たな情報(知識)をもたらしてくれたものにナレッジキューブを与えて報います。アリマキが蜜を出してアリを使役するように、チャイ=ブレはナレッジキューブを報酬にすることで、他の存在に世界群の情報を集めさせているのです。アーカイヴ遺跡を建造したなにものかはそれを知って、チャイ=ブレを信仰したと考えられています。

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螺旋特急ロストレイル

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