オープニング

 響け、この想いを乗せて。
 何もかもを越えて、どうか声よ届いて行け。

 ロストナンバー。知られざる「真理」に覚醒し、「真眼」によってあらゆる生命の上にある帰属世界を読み取る術を得た代わりに自らの帰属世界を失った存在。
「皆には、覚醒したばかりのロストナンバーを保護して貰いたいの」
 世界司書の証でもある導きの書の頁に指を掛け、瑛嘉はそう告げる。
 真理に覚醒したロストナンバーは、自分が帰属していた世界から弾き出される。そうして見知らぬ世界に飛ばされる現象をディアスポラ現象と言い、覚醒したばかりのロストナンバーを保護する事も世界図書館の重要な使命であった。
 トラベラー達には、そのロストナンバーを転移先の世界で発見・接触し、帰りのロストレイルと共に乗車して此方の0世界に連れ帰って欲しいのだという。覚醒直後のロストナンバーは本来世界図書館から渡されるパスホルダーを持たない事がほとんどなので、放置したのなら自らの存在消滅の危険性があった。
「知っているかもしれないけど、ロストレイルに乗車する際に必要なチケットには現地人の使う言葉が理解出来る『旅人の言葉』という効果があるの。でも、その覚醒したばかりのロストナンバーはチケットを持っていないから、皆のようなトラベラー達とは意思の疎通が可能だけど転移先の現地人の言葉が分からないのよ。突然見知らぬ場所に転移して、事情も分からないから説明も必要になって来るでしょうね」
 覚醒したばかりのロストナンバーはチケットを持たない為に現地の存在の言葉は理解が出来ないが、トラベラー達との意思疎通は可能。これは、世界図書館から支給されるトラベラーズノートの効果の御陰なのだろう。
「転移先の世界はブルーインブルー、ロストナンバーの覚醒・転移が確認されたのは三日前という所かしら。半日もあれば一周出来てしまうようなとある小さな島に居るらしいのだけれど……問題が幾つかあるのよね」
 トラベラー達には既に島行きの船が手配してあるから、それに乗って島に行く事になる。しかしながら、ロストナンバーを保護するにあたってそこには幾つかの問題があった。
 まず、肝心の保護対象であるロストナンバーの情報が少な過ぎるという事だった。対象は一人で、ブルーインブルーのとある島に転移が確認された事、壱番世界の出身ではなく他の異世界からの者である為、何らかの特殊能力を持っているであろう事は確かであるらしい。それからロストレイルに乗車する際に渡されるチケットには「旅人の外套」という現地人には然程外見が気にならなくされるような効果があるが、チケットを持たない保護するロストナンバーはその恩恵が無いから、基本的に種族は人間しかいないブルーインブルーでは人間とはかけ離れ過ぎた外見では間違い無くその時点で騒ぎになる。だが、今の所そのような騒ぎが起こっている様子も無い。島に住む者の言によると、この島は割合漁業も交易も盛んな所である為か男性の方はいつも入れ替わり立ち替わりひっきりなしで一々顔など覚えていられず、女性の方は訪れる事自体ほとんど無い為によく分かるが島の住民以外で新しく見掛けた女性は居ないらしかった。
「それと、そこの島は最近『海魔』の被害に遭っているの」
 曰く、古くより今からトラベラー達が向かう島の海域に棲むという海魔であるらしい。非常に音に敏感で、普段は人を襲う事など滅多にしない大人しい気性だという。しかしながら、海魔が暴れた際には周囲に及ぼす被害は甚大で現地の人々は襲撃がある度に外に出ず自宅に籠もってやり過ごしていた。
「その『海魔』の全長は壱番世界の言い方で言うと約20メートル、姿形は首長竜に近いらしいけれど詳しい生態はあまりはっきりとしていないようね。現地の伝承によると、元々は人間の青年で美しい歌声を持つ海のセイレーンに恋焦がれるあまりに海魔に変じた――というみたいだけど、それが本当であるのかは疑わしいわね。何の根拠も無い御伽噺だもの。でも此処三日間、島の何処からか歌が聞こえるというの」
 何処か異国的な響きを持たせながらも哀切を帯び、波の音と共に心に染み入るようなそれはまるでセイレーンの歌を思わせると現地の人々は言っていた。
「海魔の出現場所は海際辺りの岩場や洞窟の密集地みたいで、そこは海魔が来るからといって現地の人々は一切立ち入っていないそうよ。気になるのは、歌が聞こえている間だけ海魔は何処も襲わないという所なのだけれど――話が少し逸れ過ぎてしまったようね。ともかく、皆にはその島に居るロストナンバーを保護して貰うわ。方法は皆に任せるけど、ちゃんと考えて行ってらっしゃい」
 小さな引っ掛かりに眉を潜めながらも、瑛嘉は話を締め括るとトラベラー達に人数分の往復チケットともう一枚――保護するロストナンバーの帰りの分を差し出した。

 何処までも遠く遥かへ、喉を震わせ歌を紡ぐ。
 その切なくも美しく優しい調べは、一体何を揺らすのだろう。

品目シナリオ 管理番号235
クリエイター月見里 らく(wzam6304)
クリエイターコメント ブルーインブルーで御送り致します、月見里 らくです。食傷気味だろうと知りながらも、平気な顔でセイレーン絡みを出す空気読めない人間です。
 ディアスポラ現象によってブルーインブルーに飛ばされた覚醒したばかりのロストナンバーの保護をして下さい。ロストナンバーとの接触までの過程に描写の比重が置かれる予定です。
 色々と情報が詰め込まれておりますが、何よりも先入観に惑わされぬよう。最短距離は決めてありますが、そうなるかは皆様の行動次第です。
 それでは、皆様のプレイングを御待ちしています。

参加者
コレット・ネロ(cput4934)コンダクター 女 16歳 学生
ツヴァイ(cytv1041)ツーリスト 男 19歳 皇子
ハーデ・ビラール(cfpn7524)ツーリスト 女 19歳 強攻偵察兵
ベアトリス・アーベライン(cycy8042)ツーリスト 女 19歳 特務機関七課二尉
ルゼ・ハーベルソン(cxcy7217)ツーリスト 男 28歳 船医

ノベル

 陸に打ち上げられた魚に海藻、あちこち傷を付けている漁船。手配して貰った船から島に降りると、その足元は海水でびしょ濡れだった。
「うわ……こりゃ酷いな」
 まるで嵐が過ぎ去ったよう。見ただけでもその被害は分かるが、近くの半壊になっている小さな漁船に手をあて記憶を読み取って更に詳細を察したツヴァイは僅かに顔を顰める。その後ろで、ハーデ・ビラールも何か気になる痕跡が現場に残っているか一つも見逃さないように周辺に目を配らせた。
 島に来る為に乗せて貰った船は、勿論この島の港に停泊する事になっている。漁業も交易も盛んらしい島にはこの船以外にも港に来る船は見受けられたが、トラベラー達が乗って来た船より前に来ていたらしい船達は無傷なものは無いと言って良い程だった。
「思う以上に、問題は深刻なのかしら」
 海魔の、と港の様子を見回しながら、コレットは心配そうに呟きを落とす。
 世界司書から話を聞いた時には、ロストナンバーの保護以外の事項として軽く説明がされただけで最重要という響きには感じなかった部分もある。ただ、来たばかりのこの状態では状況の把握も何も無い。船から陸に降り立ち、一先ず陸に散らばった瓦礫の掃除をしているこの島の住民であろう者にベアトリス・アーベラインは話し掛けてみた。
「あの……私達、この島に来たばかりで事情がよく分からないのですが、何かあったのでしょうか?」
「ああ、また海魔が暴れやがったんだよ。今は一時おさまっているが、ついさっきまでな」
 島民以外の者もよく出入りする所為か、トラベラー達に対する住民の態度に何かしら不審な点は無い。何処かの他の島から来た者達と思っているようで、愚痴混じりの答えが返って来た。
 他の異世界と同じようにブルーインブルーにも幾つか現地の人々にとって脅威と思われているものはあるが、目の前に広がっている惨状の原因はやはりと言うべきか海魔の所為らしい。海賊達の仕業ならば魚や海藻などが陸に打ち上げられている訳は無く、嵐の所為ならトラベラー達が乗って来た船も何かしらの被害を受けているだろう。しかしながら、先程までの航行の途中で気象の影響を受ける事は無かった。
 話し掛けた住民は片付けで忙しいのか手短な返答だけ寄越して行ってしまい、後には周囲で人々が急ぐざわめきや寄せては返る穏やかな波音が残される。
 やがてカモメの鳴き声まで聞こえてきそうな所で、ルゼ・ハーベルソンが海の方へ遣っていた視線を島の中心部へ向けた。
「にしても……海にセイレーン、首長竜か。何だか楽しそうな仕事だな。俺の世界には海魔や魔物なんて、居なかったから」
「舞台も絶海の孤島ってヤツだしな!」
 物語のシチュエーションとしては、絶好と言うべきだろうか。記憶の中の世界と似たような海や景色ではあるがその中で異なるものにルゼは思いを馳せ、ツヴァイは明るく同意する。そんな様子に、思わずコレットは少し声を落としてたしなめた。
「もうっ……此処には遊びに来ている訳じゃないのよ」
「……ん? ああ、それよりロストナンバーを探せ、だって? 分かってる分かってる!」
 うっかり忘れそうになるかどうかはともかく、今回の依頼は此処に転移したであろうロストナンバーの保護。その為に、一行はこの島に来ていた。
 目的自体は忘れていないようだが軽く答えるツヴァイの言に、ルゼがそれに続くように切り出した。
「ま……その前に、ちょっと島で露店巡りでもしようよ」
「え?」
 唐突といえば唐突かもしれない提案に、ベアトリスは些か目を丸くして問い返す。
「ですけれど、此処に来たのは行方が分からないロストナンバーさんの保護なのですから……」
「……うん。覚醒したロストナンバーさん……大丈夫かな。……早く、行ってあげなくちゃね。私達が迎えに行けるから、転移したのがブルーインブルーで良かったけれど」
 情報では、この島に居るという事だけが分かっていると言っても過言ではないくらいのものしかない。今どのような状況下に置かれているか分からない上に、パスホルダーを持たないロストナンバーはいずれ消滅してしまう可能性があった。
 それを考えると如何しても右肩下がりになってしまう思考を打ち消すように、ルゼは言葉を続ける。
「それは確かにあるけれど、焦らないでさ。この通り急造のチームなんだから、親睦を深める為にもちょっと遊ぼうよ。どの道、聞き込みという情報収集は必要なのだろう?」
 違うだろうか、と振り返られた先に居たハーデは、直ぐの返答に窮する。
 事前にある程度現地ではどのような状態なのか聞いてはいるが、そこに行ってみなければ分からない事もある。元より島民に接触をしてみる心算だったのだが、他からそれを振られてみると優柔不断とも思われてしまう控えめな首肯を返すのみになった。
「うーん……そうですね。お店が沢山集まっているような所なら、探す方本人は居なくても島の人達は大勢居るでしょうし。何か情報を集めるなら、人間が多い所に行った方が得られるものも多いでしょうから」
「店か……此処は漁が盛んだって言うから、きっとスッゲー美味い魚なんかが売ってるんだろうな!」
「ツヴァイったら……でも、出来れば島に昔から居た住民さんから聞いた方が不自然な所がよく分かると思っていたから、聞き込みするには良いかもしれないわね」
 此処は漁業と交易が盛んで、それらを取り引きしている場所は当然あるのだろう。港の方はまだ少し片付けがあるようだから、恐らくは島の中心部の街。たとえ海魔の被害に遭っているとしても、人々の生活が完全に断たれるような事には滅多にならない。
 ぐるっと島を一周するよりも、一度に人が集まる所に行った方が良いだろうか。聞き込み自体はする心算であったから、遊びに行くという心持ちには心配がある為なかなか出来ないもののコレットは提案に同意をする。
 島自体は然程大きい規模ではない為、露店が立ち並んでいるという島の中心部へは島民の案内を要する事も無く辿り着く。そこでは、島の人々の生活の基盤は此処にあるのではないかと思われる程に活気に満ちていた。
 交易拠点としては小規模ながら、露店の数はそれなりに多い。現地で獲れる魚介類は勿論の事、他からの交易品も並んでいた。
「本当に、多く人が出入りしているんですね」
 左右に並ぶ露店と行き交う人々を眺め、ベアトリスは感想を漏らす。
 ブルーインブルーに居るのは海魔を除いて種族は人間しか居ないから、擦れ違う人々に変わった姿をした者は居ない。女性が少ないように見受けられるのは、この島の住民くらいしか居ない為だろう。しかしながら限られた種族の中でも違いは出て来るもので、様々な場所から集まって来ているらしく人々の顔や出で立ちは多様性に富んでいた。
「そこの御嬢ちゃん、旅の御土産に何か買っていかないかい?」
 歩いていると、あちらこちらの露店から声が掛けられて来る。客商売なのだから、当たり前と言えば当たり前ではあるのだろう。
 一行を旅の、と付けたのは交易の目的でこの島に立ち寄る事がほとんどの為か見知らぬ女性を見掛けるのは滅多に無いからなのだろう。気の良さそうな印象の土産物屋の主人に声を掛けられてきょとんとする女性陣の前に行きながら、ルゼは声を掛ける。
「こんにちは。ハイビスカスは売っているかな」
 他の世界では、同じ種類の花があるかどうかは分からない。店主の方も聞き慣れなかった言葉だったのか首を傾げていたが、その代わりというように出して来たのはハイビスカスとほとんど同じ形をした赤い花だった。
 それを店主から受け取り、隣に居るコレットに笑い掛ける。この花を髪飾りにしたら、きっとその金の長い髪に映えるだろう。それでちょっかいが掛かるかもしれないが、その時は困った事になる前に守ってやれば良い。
 そう思う傍らで、ベアトリスが店主に問い掛ける。
「あの、御買い物ついでに御聞きしたいのですが良いでしょうか?」
「何だい?」
「……この島で、住民が近寄らない場所――それに、最近聞こえ始めたという歌が聞こえる方角は?」
 訝しげに訊き返す店主に、ハーデが静かに問う。島民が立ち入らない場所についてはある程度知り得ていたが、後半部分の問い掛けはそれと重なる部分があるのではないかという意図も含んでいた。
「島の奴等が近付かない場所って……アンタ等、海魔でも見に行こうってのか? 止めとけ、タダの好奇心だけで済むようなモンじゃねぇよ。島の東側……海際辺りの岩場や洞窟がある場所なんだが、そこは誰も近付かねぇ」
 そもそも、この辺りで海魔が住民や地域に被害を及ぼすという事はほとんど無かったのだという。難色を示されながらも島の東側、と場所は分かった所で、ルゼはハーデが問うた言葉の後半を問おうとした時、不意に緩やかな風の流れと共に音が聞こえて来た。
 音、と言うよりは、それは声であり歌。騒然とした露店が立ち並んでいる中で、微かではあるが確かに聞こえて来る。
 詞自体は距離的に遠過ぎるのか聞き取り難いが、籠められている感情は離れていてもよく分かる。
 切々とした想いに、焦がれるような強い憧憬。そして誰か、「何か」へと向けられていた。
「これが聞こえるという、歌……でしょうか」
 風に乗るようにして流れる旋律に暫し聴き惚れてしまいながら、ベアトリスはそう呟く。その隣、ルゼが店主から受け取った赤い花の中心部からは微かな空気の震動に呼応したかのように透明な滴が花弁から滴り落ちた。
 周囲の島民達は三日経っているという所為か歌が聞こえて来ても然程混乱しているようには見受けられなかったが、それでも時折聞こえて来る音に耳を傾けるように足を止めていたり、空を仰いでいたり、目を細めているなどしていた。
「あれが聞こえるようになってから三日経ってるが何言っているのか、俺にはさっぱりだな。向かい側の串焼き屋の女将にでも後は訊いてみな」
 風の流れは東向き。聞こえて来るものについてはよく分からない、という店主は、向かい側で商いをしている串焼きの屋台を示す。情報収集をするならもう少し人に訊いてみるのも良いだろう、と一行が其方に向かおうとした所で、ふとコレットが後ろを振り返って首を傾げた。
「……あら?」
 先程までは一緒に行動していた筈のハーデの姿が無い。人混みに紛れてしまったのだろうか。トラベラーズノートで連絡してみた方が良いだろうかと思った所で、ツヴァイが事も無げに答えた。
「あぁ、さっき歌が聞こえて来た時にはもう行っちまったみたいだぜ?」
「そうなの?」
 あまり集団行動は好まないのかもしれない。それを考えると無理に引き留めるのも悪い気がして、コレットは少し心配ではあるもののハーデ自身の行動を信じようと思う。
「大丈夫だって! おっ、この魚スッゲー美味そうだな!」
「今朝獲りたての魚だよ! 海魔の御蔭で出て来る間は海に出られないけどねぇ、今やおさまっている時は波も穏やかで魚が獲りやすくなってんだよ」
 串焼き屋の前で興味深そうに並んだ品を眺めるツヴァイに、商売慣れした女将が威勢良く対応する。壱番世界で見る魚とはまた違ったブルーインブルー独特の魚介類が、塩やタレで味付けされて串焼きで売られていた。
「へー……俺も釣りして行きたいぜ!」
「私達、釣りに来た訳じゃないでしょう? ……あの、ここ数日の間で、突然現れた物や動物って、何かありませんでしたか?」
「さぁねぇ。それこそ、海魔くらいしか知らないよ。そんなのがあったら、直ぐに店先に並んでるさ」
「そうですか……」
 それは今のように串焼きにされているという事なのだろうか。度胸もありそうな女将に少し気押されつつも、コレットは女将に礼を言う。女将は愛想良く手を振りながら、屋台に並んだ魚の串焼き一本を差し出した。
「ほら、持ってきな! 餞別だよ!」
「どうも。後で頂こうと思うから、袋か何かで包んで貰えないかな」
 自分が食する訳ではないが買おうとは思っていた為、好意は受け取っておこうとルゼが袋に包まれた魚の串焼きを受け取る。焼き立てなのか、その包みの中の魚は温かかった。
「ありがとな! あっ、そうそう……ついでに、ここいらに銭湯やら温泉は無いのか?」
「それはこの島には無いねぇ。観光なら他の所に行ってきな」
 ついつい世話を焼きたがる女将には挨拶もそこそこに別れを告げ、四人はまた歩き出す。
「ツヴァイ……此処に来たのは、ロストナンバーさんを探して保護する事なのよ? ずっと一人で、言葉も通じなくて、もしかしたら寂しがってるかもしれないのに」
「そうかもしんねーけど……てか俺、世界司書の話を聞いただけで、一体どんなロストナンバーなのか分かっちゃったもんねー!」
「え?」
 まるで簡単だ、と言わんばかりに胸を張るツヴァイの発言に、先程まで情報収集をしていた為に他の面々は目を丸くする。訝しげにそれは如何いう事だと含む視線を受けながら、ツヴァイは自信満々に言葉を続けた。
「異世界の住人なのに、島では特に騒ぎが起きていない……つまりだ、この島に飛ばされたロストナンバーってのは透明人間だったんだ!! だからさ、きっと女湯に行けばソイツに会えるぜ! 透明人間のする事って言ったら、女湯覗きに決まってっからさ!」
 一瞬、何故だか沈黙が挟まった。
「……だから、銭湯か温泉は無いのか、って訊いていたのね」
「……女性である可能性もありますよね」
 若干受けの悪い女性二人の様子に苦笑を零しつつ、ルゼは天を仰いだ。
 抜けるような青い空。白い雲に混じって、旋律は流れ続けている。歩き続きなので露店が並んでいる所からも少し外れ、その為に先程よりも音がよく聞こえた。
 耳に届く音律は同じものを繰り返しているようで、けれども微妙に違っている。
 ――どうか届けと、願うように、想うように、嘆くように。誰かに、何かを焦がれるように、ただ歌は流れる。
 現地の人々は、これが何を言っているのか分からないという。しかし、そこに込められたものは自然と心に染み込んで来て、華やかさよりも清廉さが際立つ故に島に伝わる言い伝えになぞらえるように「セイレーン」と呼んでいるのだろうか。
「……歌を、何処かに届けたいのかな」
 ただ旋律を流すというだけなら、そこに意味など灯らない。意味や感情があるからこそ、歌がこうして風に乗って人々の耳に届いているのかもしれない。歌声に耳を傾けながら、ルゼは切り出す。
「俺達が探しているロストナンバーが、覚醒してこの島に到着したのは三日前。そして、島の人達がセイレーンと呼んでいるものが現れ歌を歌い始めたらしいのも三日前だろ? そのセイレーン……ちょっと気になるなぁ。偶然にしては、出来過ぎているような気がするんだ」
「三日前にロストナンバーが転移、そして歌声……歌声の主こそ、私達の探すべきロストナンバーなんでしょうか」
「うん……多分、三日前から歌を歌っている人と、私たちの探しているロストナンバーさんは、同一人物だと思うの」
 出来事が重なっている以上、それを結び付けるのは当然という所で。偶然ではなければ、それは必然という事になる。
「そう――もしかしたらそのセイレーンがロストナンバーとイコールなのかもしれないって、思ったりもするんだよね。けど、問題は何処を探すのか、って事だ」
「……そうね、どうやって探そうかしら……島に不思議な人が居るっていう話は聞いていないって、瑛嘉さんが言っていたけれど」
 ロストレイルに乗車する際に渡されるチケットの効果で、現地で目立つ姿の者は大概気にされなくなる。しかし、いきなり転移の憂き目にあったロストナンバーにはチケットを持たない以上その効果は無かった。
「ロストナンバーさんは、人の姿をしてないのかもしれないけど……」
「まぁ、そもそも透明人間をどうやって見つけるかも考えてねぇし……まずは、蛇の道は蛇。ここら辺を荒らしてる海魔ってのを探しに行こうぜ! 一応、裏づけ捜査ってのをしといた方が良いしな」
「付け足しておくと、透明人間だと決まった訳ではないからね」
 しっかりと訂正を入れつつも、探しに行かなければ如何にもならないという面については同意する所だろうとツヴァイの言葉に頷く。
「誰も姿を見ていないという事も考えられますし、海魔の生息場所に居るのかもしれませんね。では、探しに行きましょうか!」
 海魔がよく居るという場所は、この島の東部。島自体は大きく無いので、直ぐに辿り着けるだろう。とにかく行ってみようとベアトリスは他の三人を促し、流れる歌声を辿るように其方に足を向けた。
 一方で、他の面々よりもハーデは一足先に島の東部――岩場や洞窟の密集地に辿り着いていた。
 歌声は、風に乗って聞こえて来ている。その風の向きは東。方角を辿るようにして行くと、足は自然と此処に着いていた。
 ハーデの方も、この歌声の主は「三日前」という共通点から転移したロストナンバーではないかと考えている。その上で、島民と接触していない可能性も高いと思っていた。
「三日……一言も話さずに居るには長い時間だ。人型に擬態出来る相手であれば良いが」
 この島の地理に詳しくないので、岩場や洞窟が集まっているといってもその中で地底湖という存在もあるかもしれない。その為に一度、海岸の近くの崖の上で地面に耳をつけて音を聞いてみる。だが、地面からはこれといって不審な物音は聞こえて来ない。寧ろ、地面に片耳をつけていた状態の所為か、何処からか聞こえて来る歌声がはっきりと耳に届いて来た。
 伝わるのは、孤独の響き。独りである事を知りながら、けれども何かに向けて響かせている。何か一つの事ばかりを伝えようとしている反対、それ以外は何も分からないまま彷徨っているようにも何故か内心の何処かで重なるように響く。
 如何してそのような風に思うのかなど分からない。だがそこに意識を向けた御蔭か、歌声が聞こえて来る方向は察する事が出来た。海岸で着込んでいたドライスーツは着用のまま、ハーデは音の方向を間違えないように探していく。
 そうして探索をしていると、大きな岩場の所で何者かが海の方に身体を向けて腰掛けている。耳を澄ませてみると、歌声は其方から聞こえるように思える。
「……聞こえるか、異世界から来た君」
 然程大きくない声ではあったが、ハーデの呼び掛けに歌声がぴたりと止まる。同時に、はっと息を飲む音がして視線の先に居た者がすぐさま立ち上がりハーデの方へ身体を向けた。
 潮風に、海の色に似た蒼い髪がなびく。深海と同じ色をした双眸が、困惑を含んでハーデの方に向けられていた。
「私の名はハーデ。私も同じく世界から放逐された者だ。君に何が起こったか、説明出来る……返事をしてくれ」
 変わった格好程度なら、ブルーインブルーの住民だという可能性もある。だが、先程異世界から、と付けた呼び掛けに今目の前に居る人物から感じ取れる困惑は何を言っているのか分からないという態度には思わなかった。
 静かに目の前に居る者に語り掛けながら、ゆっくりと其方に近付いていく。この者が件のロストナンバーだとすると、此方の言葉は分かっている筈だろう。
 目の前に居る者は、近付いていくハーデとは対照的にじりじりと後退りをしていく。空気から感じ取れるのは、警戒にも似ている。事情がよく分からない為の事なのだろうか、と探りながら、ハーデは言葉を続ける。
「君を0世界に迎えに来た……このままでは君は世界に消去されてしまう。君を助けたい」
 近付く度に離れられる。突然、そんな事を言われても信じようが無い為だろうか。まだ、言葉足らずになっているかもしれない。
「君はここが自分の世界ではないと気付いている筈だ……同族からの応えがないのだから」
 瞬間、目の前の者の瞳が大きく揺らぐ。刹那も経たず、その口唇が震えた。
「……何処に居たって、届かない事くらい」
 その言葉の続きが流れる事は無く、唐突とも言えるタイミングで目の前に居る者が身を翻す。大きな岩場の陰へ逃げ込むように走ったその者をハーデが追い掛けるが、隠れたと思った岩場の所には誰も居ない。素っ気無い岩の群と、海の景色が広がっているだけだった。
 ――居ない。
 先程出会った者は、まず間違いなく保護するロストナンバーだろう。壱番世界以外の出身だから、何か特殊能力を持っていてもおかしくはない。ハーデ自身と同じようにテレポートでも持っていたのだろうかと思うが、恐らくそう遠くには行っていないと思う。
 まだこの近くに居るかもしれない。再び探そうと付近の岩場から少し離れた場所に目を向けた時、ちょうどこの場所に街の中心部ではハーデが単独行動を始めたので別れてしまった四人を見付けた。
「どう? 何か、分かるかしら」
 コレットにそう訊かれ、ツヴァイは手近な岩場やゴミに手をあててそこに残る記憶を読み取る。一通りその辺りを探った後で、ツヴァイはコレットの方へ振り返った。
「波とかあんまり変わんねー記憶ばかりだな。けど海魔ってヤツのはあったぜ。結構デケーみたいだ」
「やはり、この辺りに出るみたいですね」
 退治が必要になるだろうか。目的はそれではないが、万が一の事もある。心配そうに漏らしたベアトリスに、ツヴァイは変わらず明るい調子だった。
「俺、海魔ってのに会ってみたいんだ。例の歌声の主……ロストナンバーも、ちゃんと見つけられるかもしれねーからな! ……と、お手をどうぞ、姫?」
「茶化さないの。……歌……聞こえなくなったわね」
 冗談めいたツヴァイの手を取りながら、コレットは先程までは聞こえていた筈の音が無い事に気付く。音の方向は此方に近付くごとにはっきりと聞こえるようになっていたので、方角は間違っていない。
 普通に考えて絶えず歌い続けられるとは思っていない為、少し歌を中断させただけで居場所自体は此処に居るままかもしれない。
 まだこの辺りを探してみようと思った所で、ベアトリスは先にこの辺りに来ていたハーデを見付けた。
「ハーデさん」
「首尾は如何だい?」
 いずれ合流するだろうという事は予想していたので然程驚く事も無く、双方から近付いてルゼがハーデに尋ねる。その問い掛けに、ハーデは周囲を見回した。
「……この辺りに、人が通り掛からなかっただろうか。見失ってしまった」
「否……生憎と、俺達は見ていないね。見失った――と言うけど、多分それはロストナンバーなのだろう?」
 見付けたが、驚きの余り避けられてしまったのだろうか。確認代わりの問い掛けにハーデは頷き、そこから不意に何かに気付いたように海の方へ顔を向けた。
「皆さん、退がって下さい!」
 ベアトリスが叫び、ツヴァイは傍に居たコレットを庇う。同時、海際から大きな波が立った。
 岩場に水飛沫を飛ばしながら、それは長い首とその先にある頭を擡げる。灰褐色の身体に、両の手の部分は船のオールのように平べったい。身体自体は壱番世界の基準で言うと10メートル程だったが、身体から伸びている長い首は身体と同じくらいの長さがあった。
 まるで太古に居た首長竜を思わせるような外見。これが、近頃島に被害を及ぼしているという海魔なのだろう。
「こいつが海魔か! えーっと、ハウオールドアーユー?」
「そこで年齢を訊いて如何するんだい」
 実に的を射た突っ込みを貰った問い掛けに、当たり前というべきなのか海魔が答える事は無い。耳をつんざくような鳴き声を上げ、首と共に頭を岩場にぶつけたり鰭の部分を水面にばたつかせて暴れていた。
 どちらかといえば人物に対してではなく、辺り構わず暴れていると言った方が良い。しかしながら、それでも近い場所に居れば危ない事に変わりは無い。海魔が向ける矛先を注意しつつ、ベアトリスは他の面々に進言した。
「此処に居たままでは危険です。歌が聞こえている間、海魔は何処も襲わない――という事は、歌で海魔を静めているのかもしれません。歌声の主である筈のロストナンバーさんなら、海魔を大人しくさせる術を知っているでしょうから……今は逃げましょう」
「えぇ……どの道、此処は危ないものね。一旦、あの洞窟の中でやり過ごしては如何かしら」
「よし、それじゃ行こうぜ!」
 偶然見付けたのは、トラベラー達程度の人数なら楽に入れそうな洞窟。一先ず其処へ待避しようと、一行は其方に向かう。
 内部は光苔が生えていて、ぼんやりと明るい。この中までは海魔も手出し出来ない為に落ち着くまで居るとして、その間洞窟の奥を探ってみた。
 洞窟の内部は単調で、分かれ道も無い。他に何か生物が居るという訳でも無さそうだ。ある程度まで進むと、池のような水場に行き当たった。
「行き止まりか?」
「……この水は海水だ。この下から、海の方に繋がっているのだろう」
 淡水にはない塩っ気を含んでいる事を感じてハーデが答えるのを聞きながら、コレットは洞窟内に張られた水場を見渡す。そこでふと、水面が揺らぎ、何かが此方の陸地に向かって近付いて来ているのを見た。
「……あ」
「コレット? 何か不審な所が――」
 訝しげにつられるようにしてルゼが其方に目を向け、言葉を止める。見るとちょうど、水面から陸地へ何者かが上がっている所だった。
 光苔の淡い明かりに照らされて、海のような蒼い髪と滴が流れる。髪とは対照的に頭に巻かれた深紅の布も特徴的ながら、それよりも目についたのは下半身。靴も何も履いていない裸足の前――陸に上がる直前、その場所は髪と同系色をした魚を思わせる尾鰭をしていた。それはまるで、物語で言う「人魚」のように。
「……本当にセイレーンだったのか。此処まで重なって来ると、如何にも」
「それなら、綺麗な歌声を持っているのも頷けますね」
 それは聞こえて来る歌声と島に伝わる御伽噺から現地の人々がそう呼んでいるだけだと思っていたが、実際の所も間違っていなかったらしい。海魔とセイレーンに纏わる伝承がある島で、人魚のようなロストナンバーが転移して来る――偶然というよりは、何処か皮肉すら感じ取れてしまう。
「……成程。だからあの時……居なくなったように思えたのか」
 一度は見付けたが、見失ってしまった時の事をハーデは思い出す。突然居なくなったと思ったのは、海の方に飛び込んだからだろう。
 納得するトラベラー達に対し、陸地に上がった者は誰も居ないと思っていた所為か先に居た一行に気付いて驚きに目を見開く。そのまま再び水の中へ戻っていってしまう前に、それをルゼが引き留めた。
「待った。……俺達の言葉が、分かるかい?」
 問い掛けには首肯。立ち去る事はしなかったが、困惑や不審は消え去っていない。
「驚かせてすまなかった。大丈夫か……ずっと歌い続けだったのだろう? スープと固形食を持って来た……大丈夫、毒は入ってない」
「露店で貰った魚もあるけれど……如何だい?」
「!! い……否っ、それは遠慮する」
 持参して来たスープと固形食を自分で味見してみせるハーデの横で、まだ温かい魚の串焼きを勧めてみると目の前の者が顔を引き攣らせる。魚、という辺りで反応したから、共食いにもなりかねない所為だろうか。
 びくりと肩を揺らした様を眺めつつ、ハーデは切り出す。
「食べながらで良いから聞いてくれ。……私達が来た理由と、君の状況についてだ」
 あまりゆっくり話せない為、手短になるが大体の事情を掻い摘んで話し出す。何らかの理由で真理に目覚め、ロストナンバーとして覚醒した者である事、その者達はこのままでは消滅してしまう可能性がある為0世界にあると世界図書館にまで行かなければならない事――転移したばかりの者には情報として多過ぎるのは承知だが、おおまかな説明はしておかなければならない。
「……という訳で、お前を迎えに来たんだよ」
「……そう言われても」
 説明を受けても、ロストナンバーの反応は芳しくない。いきなり現れて、こうだからこうしろ、と言われて素直に納得出来ないのは仕方無い事ではあるだろう。思いながら、コレットは目の前の者に話し掛ける。
「……あなたが歌を歌っていたのよね? あなたの本当に届けたかった所には、届かなかったかもしれないけど……でも、私たちにはちゃんと、届いたよ」
 その言葉に、目の前の者がはっとする。引き結んだ口唇が震え、暫し俯いた後に小さく「有難う」と呟いた。
「何も分からず途方に暮れているかもしれないが、それなら君が私の旅人の外套を纏え。それと……あの海魔は君の知人か? 海魔はこの世界に属するものだ……連れて行けない。海魔に退くよう言ってくれ……私は海魔を排除出来るが、君の知人なら殺したくはない」
「歌が聞こえている間、海魔は何処も襲わないみたいなんです。だから、貴方が海魔を静めてあげる方法を知っているかと思って」
 後の問題は海魔。それを問われた目の前の者は、訳が分からないといった顔をした。
「……申し訳無いけど、何を言っているのか分からない」
「とぼけている訳じゃ……ないんだよな?」
「恐らく、理解していないんだよ」
 転移したばかりのロストナンバーは、現地の事情も何も知らない。その海域に海魔が棲んでいる事も、その性質も分からない。歌によって海魔が静められているという事が考えられても、本人にとっては転移するその前を知らないのだから、理解していないのだろう。
 つまり、そうなっているのは結果であって意図したものではなかった。
 考えてみれば、此処で海魔を大人しくさせてもロストナンバーが居なくなってしまえばまた海魔が暴れてしまう可能性は多大にあった。
「……あのさ、さっき教えて貰ったけれど――世界図書館っていうのは、ロストナンバー……っていうのか? そういう人達を保護するだけじゃないんだよな」
「そうね、その世界の調査に行ったり、竜刻を集めたり、船舶の護衛とか――……あっ……」
「そうか……現在、海魔で被害が出ている以上、その手に関する依頼が来るかもしれない可能性もあるだろう、という事かな」
 世界図書館からの依頼には、現地の人々が迷惑を被っている為にそれを解決する、というものもある。ルゼがそれを理解して告げると、目の前の者は微かに頷いて言葉を続けた。
「この島の海魔……と呼ぶみたいだけど、それが暴れているのは俺が自分勝手な行いをした所為もあるのだろうけど……それだけじゃないように感じる。他に何か、原因があるような気がするんだ。俺の歌で静まるようには思えないけど、此処を離れる時に歌えば少なくとも少しの間だけは凌げると思うから……それでもし、この島での依頼があるのなら」
 今度は、海魔の方にも力を傾けよう。今は何の力も無いただのロストナンバーだけれど、こうして自分を探し出して来てくれた人達のように尽くせるのなら。
「……ん? って事は、来てくれるんだよな?」
 あまりにもさらっとした流れだった為に気が付かなくなりそうだが、了承したのかとツヴァイが首を傾げる。そうみたい、とコレットはくすくす笑いながら、目の前の者に言った。
「私はコンダクターだけど……ロストナンバーになって、沢山の素敵な人達に出会えたわ。嬉しい事も、一杯経験出来たから……あなたも、そうなると良いわね」
「そうですよ。それにもしかしたら……歌を届けたかった人にも、出会えるかもしれません」
 私は追い掛けてきちゃった身ですから、とベアトリスがはにかみながら言うと、ほんの少しだけ周りの空気が和らぐ。
「……俺の所為で迷惑を掛けてしまったみたいだ。こうしていても仕方無いし、行こう。歌い続きでならないといけない訳だし」
「うん、いっしょに帰ろう。それと、あの、名前……」
「……君の名を教えて貰えるか?」
 歌を紡ぐなら、その間は会話出来なくなる。そういえば名前を訊いていない事を思い出し、ハーデが問い掛ける。
「――漣(さざなみ)」
 問い掛けに一度だけ振り返って短く告げ、その後に口唇から旋律を紡ぎ出す。
 流れるのは、緩やかなメロディ。僅かな時間だけ海魔を慰め、波を穏やかにさせる。
 そしてそれは最初に耳にした時よりも、少しだけ明るく優しい響きをしていた。

クリエイターコメント 御待たせ致しました、リプレイを御送り致します。今回はブルーインブルーにてロストナンバーの保護でした。ちなみに漣は男です。歌声の主=ロストナンバーという部分はかなり分かりやすく書いた為か、皆様御察しの通りでした。その他、様々なアプローチを興味深く拝見させて頂きました。
 ロストナンバーは無事保護、海魔については今後何かしらの展開があるかもしれません。書き切れなかったのは大人の事情(字数の壁)です。その為に全てのプレイングを拾い切れず、申し訳ありません。
 最後に、この度はシナリオに御参加頂き誠に有難う御座いました。
公開日時2010-04-30(金) 18:40

 

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