オープニング

 ツリコンを行います、という張り紙が、ターミナルのあちらこちらで出されていた。
 その張り紙を良く見れば、小さな字で「クリスマスといえばツリー、ツリーといえば飾りつけ。よって、ツリーの飾りつけのコンテストを開催します」とある。
 大小さまざまなツリーが用意してあり、大きいものだと他の人たちと一緒に、小さいものだと個人で飾りつけが出来るそうだ。
 コンテストと銘打っているものの、特に賞などが設けられているわけではない。
 ただ、広場に用意されたツリーを綺麗に飾りつけるという、それだけである。
 また、広場を開放するので、店を出しても良いとある。


 さあ、クリスマスを共に過ごそう!

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!注意!
パーティシナリオでは、プレイング内容によっては描写がごくわずかになるか、ノベルに登場できない場合があります。ご参加の方はあらかじめご了承のうえ、趣旨に沿ったプレイングをお願いします。
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品目パーティシナリオ 管理番号1566
クリエイター霜月玲守(wsba2220)
クリエイターコメント クリスマスパーティのお誘いに上がりました。
 下記より、行動を選んで参加してくださいませ。
 いずれも、グループでも個人でも構いません。
 グループ参加の場合は、どなたと一緒に参加するかをお書き添え下さいませ。

【1】ツリコンに参加
 色んな人と一緒に作り上げたい場合は大きなツリーを、個人で飾り付けたい場合は小さなツリーを選んでください。
 どんな風に作り上げるかは、自由です。
 大きなツリーの場合は、コンセプトを決めることは難しいので、飾り付けるものの大きさや数などを書いてください。

【2】出店
 飲食や物品、サービスといったものを提供してください。
 ツリコン参加者さんへの差し入れ等もOKです。

【3】食べ歩きや見物
 飾りつけられたツリーを見学したり、出店でお買い物をしたりして下さい。

【4】その他
 ツリコンを別のものと勘違いしてしまったり、会場内でミニライブを開いたり。
 とにかく会場に行くけど、ツリコンや出店やぶらつきをするんじゃないよーって場合はこちらを選んでください。

 以上、1~4のどの行動をするかを明記の上、行動を書いてください。
 グループ参加の場合は、一緒に過ごされる方も忘れずお書き添え下さいませ。

 それでは、皆様の参加を心よりお待ちしております!

参加者
ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノ(cppx6659)コンダクター 女 16歳 女子大生
日和坂 綾(crvw8100)コンダクター 女 17歳 燃える炎の赤ジャージ大学生
ゼシカ・ホーエンハイム(cahu8675)コンダクター 女 5歳 迷子
マルチェロ・キルシュ(cvxy2123)コンダクター 男 23歳 教員
ティリクティア(curp9866)ツーリスト 女 10歳 巫女姫
ディーナ・ティモネン(cnuc9362)ツーリスト 女 23歳 逃亡者(犯罪者)/殺人鬼
シーアールシー ゼロ(czzf6499)ツーリスト 女 8歳 まどろむこと
相沢 優(ctcn6216)コンダクター 男 17歳 大学生
バナーテイル・シートン(cxrd9163)ツーリスト 男 14歳 森の子リス
アーネスト・マルトラバーズ・シートン(cmzy8471)コンダクター 男 23歳 動物学者または獣医
坂上 健(czzp3547)コンダクター 男 18歳 覚醒時:武器ヲタク高校生、現在:警察官
ガルバリュート・ブロンデリング・フォン・ウォーロード(cpzt8399)ツーリスト 男 29歳 機動騎士
ジャック・ハート(cbzs7269)ツーリスト 男 24歳 ハートのジャック
チェガル フランチェスカ(cbnu9790)ツーリスト 女 18歳 獣竜人の冒険者
祭堂 蘭花(cfcz1722)ツーリスト 男 16歳 忍者(忍術使い)
ワーブ・シートン(chan1809)ツーリスト 男 18歳 守護者
ヴァリオ・ゴルドベルグ(cdym6275)ツーリスト 男 23歳 剣士
虎部 隆(cuxx6990)コンダクター 男 17歳 学生
レイド・グローリーベル・エルスノール(csty7042)ツーリスト その他 23歳 使い魔
ハーミット(cryv6888)コンダクター 男 17歳 歌手
マフ・タークス(ccmh5939)ツーリスト 男 28歳 園芸師
藤枝 竜(czxw1528)ツーリスト 女 16歳 学生
カーマイン=バーガンディー・サマーニア(cyzd2860)ツーリスト 男 24歳 絵に描かれた鳥
ドアマン(cvyu5216)ツーリスト 男 53歳 ドアマン
舞原 絵奈(csss4616)ツーリスト 女 16歳 半人前除霊師

ノベル

「メリークリスマス!」
 ツリコンの会場から少し離れた場所で、ストリートライブが開かれていた。
 会場に向かおうとする人々の足が、ふと止まる。
 歌っているのは、ハーミットだ。0世界に来てから、あんまり唄っていなかったと気付いたのだ。
「新曲は最近書いてないから、『Tarot』の曲でいいかな?」
 クリスマスの雰囲気に沿っている、雪と夢をイメージしたバラードソングだ。
(後は、壱番世界のクリスマスソングかな?)
 歌いながら、ハーミットはふと気付く。
 自分をビデオカメラで撮影しているマフ・タークスの姿が見えたのだ。
「なっ……何でここにいるの?」
 歌の途中で、思わずハーミットは突っ込む。マフは「失礼なヤツだな」と言いながらも、ビデオカメラは手放さない。
「Marcelloってヤツに頼まれたんだよ。さっさと唄え、この野郎」
「ちょっ」
 ハーミットは何かを言おうとし、ぐっと言葉を呑み、再び唄い始める。
(やれやれ)
 マフはそっと目を閉じる。
 会場の外れで、聞いたことのある声がすると思っていた。やってきたらハーミットがライブを開いていた。ただ、それだけだ。
「ったく、オレが惚れた女に、声だけ似やがって。男のクセに」
 ぶつぶつ言いながら、マフは目を開ける。
 やはり、ハーミットが歌っている。女ではなく、男のハーミットが。
 辺りを見ると、道行く人々が足を止め、ハーミットのライブを楽しんでいる。
 即興のライブにしては、なかなかの人入りだ。
「曲のタイトルは知らんが、ここまで声が通るとはな」
 マフは呟いた後、ビデオカメラを持ち直す。
 クリスマスを盛り上げるように、ハーミットの歌声は続いていた。

 ライブ映像を見ながら、Marcello・Kirschは鼻歌交じりに店を切り盛りする。
「温かくて、食べ歩きのできるものって事で」
 売っているのは、パニーニだ。生ハムに、ソフトサラミ。チーズ、バジルソースにマヨネーズ。勿論トマトやレタスといった野菜もたくさんある。
「あれ、これ……クリスマスカラーだ」
 丁度いいや、と呟いて笑う。
 マフの撮っているライブ映像からは、丁度ハーミットがクリスマスソングを歌っている。
「まあ、クリスマスソングね」
 隣の屋台から、ひょい、とディーナ・ティモネンが顔を覗かせる。
「友達がライブしてて。あ、良かったら」
 Marcelloはそう言って、売り物のホットチョコレートを差し出す。
「じゃあ、私からも」
 ディーナはそう言って、ホットワインに手を伸ばす。
「ごめん。俺、酒駄目なんだ」
「あら、ごめんなさい。これならどう?」
 ディーナは改めて、ホットレモネードを差し出す。
「有難う。そっちは、トリッパと、チキンバーと……」
「紙コップに入れて出せたらいいな、と思って」
「クリスマスだもんな」
「ええ。こういうの、やってみたかったの」
 ふふ、とディーナは笑う。ミニスカサンタ服が、良く似合っている。流石に、厚手のコートを羽織ってはいるが。
「おいしーごはーんを出してるお店がいっぱいあるって聞いて!」
 にょき、と顔が二人の間に飛び出てきた。ちょこん、とそこにいたのは、レイド・グローリーベル・エルスノールだ。
「パニーニ、美味しいぞ」
「チキンバーとか、トリッパもあるわよ」
「じゃあ、全部くださーいな」
 レイドはそう言って、二人から食べ物を受け取る。
「どんなのがあるか、全然わかんなかったけどネ。とりあえず、いっぱい食べるー!」
 レイドは満面の笑みで言うと、ぱくっとパニーニにかぶりつく。おいしー、と嬉しそうにぱくついている。
「みんなへのお土産も買って帰りたいしー、紅茶に合うお菓子でも探してみようかな?」
「それなら、あっちにカフェが出てたわよ」
 ディーナの言葉に「カフェ?」とレイドは聞き返す。
「ハオさんが出してたよ。クリスマス仕様のお菓子とか売ってたっけ」
 カフェの話で盛り上がる二人に、レイドは「なるほどー」と言って、ぱくっと最後のパニーニを突っ込む。
「じゃあ、行ってみるよ。ありがとー」
「メリー・クリスマス。どうぞ、楽しいひと時を」
 レイドの背に、ディーナは声をかける。
「いいな、こういうの。いつかお店を持って、こういう事してみたいな」
「確かに楽しいね」
 ディーナの言葉に、Marcelloが頷く。ディーナは「そうね」と頷き、ふふふ、と笑った。
「余ったら、ロンに差し入れしちゃおう」
 ディーナがそういった瞬間、すいません、と声をかけられる。新たなお客が来たのだ。
 Marcelloとディーナが対応している間に、レイドはカフェへと到着しようとしていた。そして、ふと気付いたように呟く。
「そいえば、綾も食べ歩きしてるんだっけ」
 会えたら、一緒についてってみようかなーと付け加え、くすくすと笑う。
「何かと面白いニンゲンだからなー。見てて飽きないよね」
 暫く行くと、カフェに到着する。ずら、と美味しそうなお菓子が並んでおり、カフェオレ無料提供中、の文字も見える。
「どれがお勧めかなー?」
 レイドはハオに尋ねる。ティータイムが楽しみになる、お菓子を求めて。

 はっくしゅん、と日和坂・綾はクシャミをする。
「誰かが噂しているのかな」
 真面目な顔で言うと、隣にいる相沢 優が「かもね」と言って笑う。
「そんだけ食べ物を持ってるからじゃない?」
「全制覇するためには、仕方ないよね?」
 綾の手には、パニーニやらチキンバーやらお菓子やらうどんやら。
 とにかく、沢山の食べ物が乗っかっている。
「まだまだこれからだよ、ユウ」
「そっか。でも、不思議だなぁ。あれから、一年経ったんだ」
 優はそう言って思い返す。昨年のクリスマスは、店を出す方の側だった。懐かしみつつ、手にしていた焼きそばを口にする。あつあつで、ソースの匂いがたまらない。
「ユウのそれ、美味しそう。一口ちょうだい! 代わりに、コッチの好きなの食べてイイから」
 ずいずい、と綾は食べ物を差し出す。優は考えた末、パニーニを受け取り、代わりに焼きそばを渡す。
「うーん、美味しい! もっと買えばよかったなあ」
「それ以上?」
「うん」
「そ、そっか……あ、あそこ。ゼロの店があるよ」
 優は綾への突っ込みをとりあえず置き、一点の屋台を指差す。
 シーアールシー ゼロが出している店だ。
「いらっしゃいませ、なのです」
「今年も頑張ってるね、ゼロ」
「前年のクリスマスより、更にパワーアップしてるのです」
 ぐっと拳を作りつつ、ゼロはずらっと並んだ団子を疲労する。
 その名も、謎団子・怪!
「これは、前年の謎団子をあらゆる面で強化し、面白びっくりパーティーグッズとして、長足の進歩を遂げているのです」
「パーティーグッズとしての自覚はあるんだね」
 はは、と優は突っ込む。
「まず、味! 美味ゲロマズの振幅、当社比2倍!」
「2倍なんだ!」
 キラキラした目で言う、綾。
「社?」
 気になる部分を聞き流せなかった、優。
「栄養価は、一口で数分程、男性はムキムキ! 女性はボンキュバン! しかも、私が団子を持って巨大化し、私だけ戻れば……増産プロセスで、無料で無尽蔵に供給できるのです」
「あ、それは凄い」
 素直に優は感心し、綾は手を叩いている。
「これが、無料で提供なのです! 完璧、なのです」
 パチパチパチパチ。
 気付けば、ゼロの屋台の周りで、拍手が起こっていた。
「何だか、凄い事になってるな」
 苦笑交じりに、虎部 隆が声をかけてきた。
「あ、隆。やっほー」
「食べ歩きをやってるの?」
「まあ、これからって所だな。飯は慎重に行かないと」
 隆の言葉に、ずい、とゼロが謎団子・怪を差し出す。
「さあ、これを」
「俺、無理に七面鳥食わなくていいけど、それで妥協するのは駄目な気がするんだよな」
 ふ、と隆は目線をそらす。
「そういわず、さあさあ!」
 ずいずいと詰め寄るゼロに、隆は「あ」と声を出し、明後日の方向を見る。それにつられ、ゼロもそちらを見る。
 その隙に隆は、だっ、と走り去る。
「綾、優、あとで駄弁ろうな! 異世界にサンタがいるかってな!」
 去り際に、隆が叫ぶ。綾と優は「了解」と言葉を返す。
「じゃあ、私達もいこっか。……ほら、あれ。可愛いミニテディ! ユウ、ああいうふわもこ好きでしょ? 2つ頂戴!」
 ぐい、と綾は優の腕を引っ張る。優は「じゃあね、ゼロ」と手を振りつつ、綾に引っ張られていく。
「では、そこのあなた!」
 ゼロの団子が、ぐいぐいと、見物客の口に入れられていくのだった。

 祭堂 蘭花の出しているうどん屋の横は、藤枝 竜の鉄板焼きの店であった。
 暖かな店が並んでいるとの事で、人の入りも上々だ。
「いらっしゃーい! メリークリスマース! あっつあっつで食べながらあったまれるお店ですよー」
 じゅる、と最後に涎が出そうになるのを、どうにか留める。鉄板焼きも隣のうどんも、とにかくいい匂いがする。
 鉄板焼きはほぼセルフサービス。とにかく火を出していればいいだけだ。いい匂いに涎は出るが。
 暫くすると、ようやく休憩時間になった。へろへろ、と近くにあった机と椅子につく。まかないの鉄板焼肉とオムそばセットを、忘れずにもらってから。
「しやわせー……でも、うどん」
 食べながら呟くと、とん、と目の前に丼が置かれた。目線をあげると、そこには蘭花の姿がある。
「君、隣の鉄板焼きの人だよね? 折角だから、お裾分け」
「嬉しいですー。でも、いいんですか?」
「うん、この飲食スペース自体僕の用意したものだし、構わないよ」
 蘭花の言葉に竜はお礼を言ってから、うどんを啜る。昆布と鰹がしっかり効いた出汁だ。
「どう? うどんは手打ちで、出汁もお手製のこだわり品だよ」
「凄く美味しいですー。でも、どうしてうどん?」
「クリスマスにうどんはヘン? けど、良くない? 体もあったまるしー」
「ああ、それはそうかもしれませんね」
「トッピングもあるよ。てんぷらとか、油揚げとか」
「うわあ、それもいいですねー」
 竜は言い、改めて蘭花の店を見る。ぱっと見は、縁日の的屋みたいだ。
「あれ、ケーキもあるんですか?」
 お店の端に、抹茶のケーキが置いてある。
「あれは抹茶チョコケーキだよー。僕の特製なんだ」
「抹茶チョコケーキ、ですか!」
 じゅるり、と竜が涎を啜る。蘭花は「じゃあ」と言って、悪戯っぽく笑う。
「そっちの鉄板焼肉と、交換してもらおうかな」
「え、これですか? じゃ、じゃあ、ちょっとだけ!」
 暖かい店の、暖かい商品の交換会が、密やかに行われるのだった。

 ミニスカサンタに撒き付いた、きらきらと輝くイルミネーションが移動していた。
 いや、正しくは、イルミネーションをぐるぐると体に巻きつけている、ミニスカサンタコスをしたチェガル フランチェスカである。
「釣道具持ってきてる人いないかなー」
 チェガルはきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。たまにぴょんと飛び出た釣竿が見える。
 しかし、彼らに注目はいかない。それよりも注目されるべく、歩く獣竜イルミネーションがいるのだから。
(コンセント式のイルミネーションを巻き付けて、魔力の電気流しているだけだけど)
 緑コードなのと、毛皮にコンセントを隠しているのとで、チェガル自身がイルミネーションになっているのだ。
「あ」
 ふと目の前の店を見ると、クリスマスローズ・ポインセチアといった花や旬の冬野菜、雑貨といった、様々なものが並んでいる。
 ヴァリオ・ゴルドベルグの店だ。
「いらっしゃい」
「色んなものを売ってるんだね。絵に木彫り人形に……お菓子にケーキまで」
「そっちのは、友人達が提供してくれたものだ」
「手編みのマフラーは?」
「それは、同居人が作った」
「色んな人の力がこもってるんだねー」
 感心したようにチェガルが言うと、ヴァリオはこくりと頷く。
「こっちは、鉱石が雪だるまとか結晶みたいになってる」
 チェガルは思わず手に取る。きらきらと鉱石が光って綺麗だ。
「それ、買ってやろうか」
 突如声がして振り向くと、隆が立っていた。
「こういう小物、いいよな。折角だから、記念に」
「ほほう、おごりとな? それはいいのう」
 新たな声がしてそちらを見ると、今度はジュリエッタ・凛・アヴェルリーノが嬉しそうに立っている。クリスマスの雑貨を手にしながら。
「わあ、可愛いね、それ。どこで買ったの?」
「向こうで、漆重・シノが輪投げで雑貨を取る店を出しておってな」
 チェガルの問いに、ジュリエッタは答える。
「近くで、ロンがかぼちゃ頭のぬいぐるみとかも売っておったぞ」
「そういえば、俺も見たな。その隣にはフェイが本を売ってたっけ」
 隆も思い返しつつ言う。
「どれも欲しくなっちゃうね」
 チェガルが言うと、ヴァリオも「なるほど」と頷く。
「俺は、同居人と友人達への贈り物も探していてな。星の硝子細工などどうかと思っていたんだ」
「ええい、全員にはおごらねーって!」
 隆は慌てて突っ込む。
「でも、ボクにはこれを買ってくれるんだよね?」
 鉱石で出来た雪の結晶を差し出しつつ、チェガルが隆に尋ねる。
「そうだな、丁度クリスマスツリーみたいになってるし、飾っとけ飾っとけ」
 隆はそう言いながら、ヴァリオから雪の結晶を購入し、チェガルに手渡す。チェガルは嬉しそうに、それを体に飾り付けた。
「よし、パニーニやらチキンバーやらうどんやら焼肉やら、がっつり食ってやるぜ!」
「謎団子っていうのを見たよ?」
 チェガルの言葉に、拳を作った隆は「いやいや」と手を振る。
「それだけは、ねーから」
 隆の言葉に、一同は笑うのだった。


 ツリコン会場では、大小さまざまなツリーに人々が飾り付けを行っていた。
「やっぱり、こういうところで武器の良さをアピールするのが大事だと思うんだ、うん」
 坂上 健は「なあ、ポッポ」と、ツリーの頂点に止まっているセクタンに話しかける。
 健のツリーは、見事なまでに武器で彩られている。
 小さな武器のミニチュアがゆらゆらと木の枝で揺れ、それにモールやLED、普通のオーナメントも飾られている。
 全体的に、派手派手しい。
 見物客がやってくると、待ってました、といわんばかりに健は近くに置いてある発電自転車を必死に漕ぐ。Z.M.A.で借りてきた、LED用の電気だ。
「そっちは加州清光で、こっちは和泉守兼定!」
 がこがこがこがこ、と自転車を漕ぐ音が響く。
「あ、それは俸手裏剣に、ボウガンな! やっぱり銘アリ混ぜた方が、喜ぶ人多いかと思ってさ!」
 へぇ、と感心する声が聞こえる。健はその反応に心の中でガッツポーズをしつつ、必死で自転車を漕ぎ続ける。
「よーし、目指せ武器ヲタクの市民権向上!」
 うおおおお、と健は漕ぎまくる。
 きらきらとLEDが光り輝いている。武器のミニチュアは、その光を受けて、様々な色に光っている。
 市民権向上ができた……かもしれない。

 真っ白な木に、黄色い星を飾りつけながら、ティリクティアはにっこりと笑う。
「うん、綺麗!」
 お菓子の飾りを多数飾りつけ、全体的に明るい色彩になっている。
「あ」
 ことん、と飾ろうとしたキャンディの飾りが落ちてしまった。慌てて拾おうとすると、にゃあ、という声と共に飾りが手渡される。黒猫 にゃんこだ。
「ありがとう」
「どういたしましてにゃあ」
 にゃんこは満足そうにいい、またとてとてとツリコン会場へと紛れ込んでいく。
「よし、できたー!」
 最後の飾りを飾りつけ、ついにティリクティアのツリーが完成する。少し離れた所から確認し、満足そうに頷く。
「じゃあ、記念撮影」
 パシャ、と持ってきたカメラで撮影する。正直、あんまり上手ではない。
「それと……すいません」
「俺?」
 ぜえはあと肩で息をしている健に、ティリクティアは声をかける。必死で自転車を漕いだ後らしい。
「私とこのツリー、一緒に撮ってもらえますか?」
「いいよ」
 パシャ、と一緒に撮影してもらう。ティリクティアより、上手い。
「よーし、他の人のも見て回ろうっと!」
 ティリクティアは健に礼を言い、ツリコン会場内へと向かう。カメラを握り締めて。

 ふむ、とツリーを見つめながら、カーマイン=バーガンディ・サマーニアはこっくりと頷く。
「中々面白いですね」
 小さなツリーに、イミテーションの果物をたくさん飾り付けていく。
 林檎に蜜柑、梨に葡萄といった、様々な果物だ。
「本来、一緒になるはずもない果物たちを飾ってみるというのは、中々楽しいものでございますね」
 同じ木に、違う果物は生らない。だが、クリスマスツリーならば、それを可能とする。
「このツリーも小さいけれど、可愛らしくて温かみのある、よいものでございます」
 カーマインはそう言い、林檎を飾る。中に灯りが入っており、ぼんやりと光っている。
「ふふ、これも良い音です」
 ちりん、と涼しい音を響かせる鈴を手にし、飾り付けていく。胡桃の形をした鈴は、様々な果物を飾り付けられた木に、よく合っている。
 全て飾りつけ終えた後、カーマインは少しはなれてツリーを見る。
 ぽう、と優しい灯りが林檎に灯っており、様々なイミテーションの果物を温かな光で照らしている。風が吹けばツリーがやわらかく揺れ、ちりんちりん、と鈴の音が響く。
「楽しいものでございますね」
 今一度、カーマインは呟く。
 実感のこもった、一言であった。

「HAHAHA!」
 小さなツリーを飾り付けている中に、一層楽しそうな声が響く。ガルバリュート・ブロンデリング・フォン・ウォーロードである。
 ガルバリュートは体を緑に塗りたくり、星をつけたギアを高々と掲げている。装飾と電光コードを固く己に巻きつけ、立っている。
「見られているようで、その実、拙者の本質は見られていない」
 体の各所には、玉や飴といった飾りまで、ふんだんに取り付けられている。
「それもまた、良し!」
 自分ではなく、ツリーとして見られているという事なのだが、間違いなく変態。
 時々、フンフン、と言いながらポーズを変えている。様々なポーズをとるツリー(?)に、見物客を飽きさせる事はない。
「フンッ!」
 ぶちっ、とコードが引きちぎれる。力が入りすぎて、パンプアップで千切れてしまったらしい。
「装飾品は脆弱で困る」
 やれやれ、と言わんばかりに、ガルバリュートは言う。
 装飾品が脆弱なのか、ガルバリュートが力強いのか。恐らく後者であろう。
「HAHAHA!」
 ガルバリュートの笑い声は、楽しそうに広場に響き渡るのだった。

 少し大きめのツリーには、シートン一家が挑戦しようとしていた。
 アーネスト・マルトラバーズ・シートン、ワーブ・シートン、バナーテイル・シートンの三人だ。三人と言うか、お三方である。
「さて、やりましょうか」
 アーネストが言うと、ワーブがこっくりと頷く。
「おいらも、手伝うのですよぅ」
「細かい所なら、お任せだよ」
 バナーテイルもこくこくと頷く。
「では、大雑把な所はワーブさん、細かい所はバナーテイルさんにお願いしましょうか。ワーブさん、これを」
 アーネストはそう言いながら、ワーブにモールを手渡す。
「バナーテイルさんは、この端を一番上に括りつけてもらえますか?」
「任せてくれよ!」
 すたたた、と素早い動きでバナーテイルはツリーの頂上へと向かう。あっという間だ。流石は、リスである。
「括ったよー!」
「じゃあ、ワーブさん。ツリーの周りを回ってもらえますか?」
「了解だよぅ」
 ワーブはモールの端を持って、のっしのっしとツリー周りを歩き始める。ちゃんと、トラベルギア、ポラリスの爪を発動させている。
 でなければ、物が持てないからである。
「その間に、バナーテイルさんはこれらの飾りを飾り付けてもらえますか? わたくしも行きますから」
 アーネストはそう言い、オーナメントをバナーテイルに手渡す。そして、自らもハシゴに登っていく。
 バナーテイルはオーナメントを持ったまま、たたたた、とかけていく。そして、アーネストに指定された所に一緒に飾りをつけて行く。
 下では、ワーブがモールを飾りつけ終えていた。
「できたよぅ」
「じゃあ、あちらに置いてあるオーナメントの箱を、持ってきてもらえますか?」
 アーネストの指差す方に、オーナメントが沢山入っている箱がある。ワーブは「了解だよぅ」と答え、荷物を移動させていく。
「とりあえず、ここに置いて行くのですよぅ」
「有難うございますー」
「次はここに飾ればいいんだよね?」
「はい」
 そういった会話や行動を何度も繰り返し、大きなツリーは綺麗に飾られる事ができた。
「やったー、できたー!」
 バナーテイルが、ぴょん、と跳ねて喜ぶ。
「完成したのですね」
 ほう、とアーネストが微笑む。
「綺麗だよぅ」
 ワーブも嬉しそうに、こくこくと何度も頷く。
「皆で力を合わせたからですね」
「楽しかったよぅ」
「ちょっと大変だったけどね」
 くすくすと三人は顔を見合わせ、そしてアーネストは二人に向かって口を開く。
「メリークリスマス」
 ワーブとバナーテイルは顔を見合わせ、同じように「メリークリスマス」と返すのであった。

 広場の中心にある、一番大きなツリー。
 そこには、色んな人と一緒に飾りつけようと、多くの人が集っていた。
「うわあ、それ、凄く可愛いですね!」
 舞原 絵奈は、ドアマンが飾っているあみぐるみを見て笑う。
「有難うございます。こちら、ジンジャーマンになっております」
 ドアマンが嬉しそうにあみぐるみを差し出す。
「こっちは雪だるまですね」
「はい。他にも、様々なオーナメントを持ってきてみました」
 ドアマンはそう言いながら、袋から様々なあみぐるみを見せる。
「舞原様は、良く動いてらっしゃいますね」
「はい。皆さんとこうして作業するの、すっごく楽しくて。私、今日はいくら動いてもバテる気がしません!」
「それは頼もしゅうございます」
 二人が話しながら飾り付けていると、後ろから「あの」と声が掛かる。
「ゼシね、高い所に飾りたいの。でも届かなくてね」
 もじもじと、ゼシカ・ホーエンハイムが言う。
「じゃあ、肩車しましょうか?」
 絵奈の言葉に、ぱあ、とゼシカの顔が綻ぶ。
「あ、ありがとう」
「これ、ゼシカさんが作ったんですか?」
 絵奈の問いに、ゼシカは頬をほんのり赤く染めつつ、こっくりと頷く。
「ゼシの手作りビーズのアクセサリーで、ツリーさんもお洒落さんに大変身」
「うん、確かに大変身ですね!」
「これがお星さま、これはうさぎさん。これは……」
 あ、という声と共に、ビーズのアクセサリーが下に落ちてしまう。そこに、とててて、と白いフェレットがやってきて、拾いあげる。アドだ。
 アドはビーズのアクセサリーをすっとゼシカに手渡し、またどこかに行ってしまった。
「じゃあ、飾り付けちゃいましょうか」
 絵奈に肩車をしてもらい、んしょ、とゼシカはツリーに飾り付ける。キラキラと光に反射して、輝いている。
「上の方をご所望でしたら、わたくしがお手伝いできますよ」
「ならば、これもお願いできますか?」
 ドアマンが絵奈とゼシカからビーズのアクセサリーを受け取っていると、予祝之命が小さな鈴を差し出してきた。民族調の組紐をあしらっている。
「そういうものも飾ってよいのだな」
 感心したように、ツギメ・シュタインが言う。
「ツギメさんも、飾り付けに来られたんですか?」
 絵奈が尋ねると、ツギメはこっくりと頷く。
「皆を楽しませるものを自分で飾る、というのは、中々興味深くてな」
「では皆様、行ってまいります」
 ドアマンは声をかけた後、上の方の宙にドアを設置する。ドアを開け、上の方にビーズのアクセサリーと鈴を飾りつけようとする。
「これは」
 興味深い何かを見つけて呟いた後、飾りつけ、再び皆の下に戻る。
「有難うございます、ドアマンさん」
 ゼシカがぺこりと頭を下げる。ドアマンは「いえ」と首を振り、微笑む。
「珍しいものを拝見できたので、満足でございます」
 ドアマンは微笑み、上を指差す。
 そこには、宇治喜撰241673が飾り付けられている。皆は顔を合わせた後、再び作業に戻る。
 全て完了すると、一番大きなツリーに、灯が灯った。
「凄い。こんな綺麗なもの、初めて見た」
 絵奈は呟く。ドアマンやゼシカは、嬉しそうに見上げている。
 二人を心配させないよう、絵奈はその場をそっと離れる。涙が零れ落ちる前に。

 広場から見える一番大きな建物に、イルミネーションツリーが出来上がっていた。ジュリエッタが、窓にセクタンの資格能力を利用して、正確に電飾を取り付けていったのだ。
「イタリアでは、聖夜は一番重要なお祭じゃ。イタリア都市グッビオの世界一ツリーには及ばぬが、皆が楽しんでくれれば幸いじゃのう」
 ジュリエッタはイルミネーションを見て微笑む。そして、ゆっくりと目を閉じる。
(昔、見たのう。亡き両親と共に)
 じり、と鼻の奥が痛い。
 目を開くと、空からふわふわと雪が降ってきていた。ホワイトクリスマスだ。
「風の扱いは、任せろッてンだヨ! 俺サマの十八番だゼ、ゲハハハハ!」
 どこかで、声が響いてくる。ジャック・ハートの声だ。
「メリー・クリスマス、良い夢をッてなァ、仔猫チャン?」
 ヒャーハハハハ、とジャックは笑い声を上げる。が、すぐにカップルに気付き、中指を立てる。
「見せ付けてンじゃねェヨ、バカヤローども!」
 その声に対し「どうせ見せ付けられるならツリーの方がいいよな!」という声が帰ってきたような気がした。
 雪合戦の会場から強奪した雪を降らせつつ、ジャックは会場を見つめる。キラキラと輝く、沢山のツリーたちを。
「キング、クイーン……アルナ。いつか必ず帰る。この地を、血と炎に染めてロストレイルを奪う。氏族のために」
 小声でジャックは呟く。誰の耳にも届かぬ、陰鬱な声で。

 クリスマスの夜は更けていく。
 喜びも、悲しみも、怒りも、楽しさも。全てが渦巻いて、イルミネーションへと変換され、キラキラと輝かせながら。
 だからこそ、今一度皆で叫ぶのだ。
 メリークリスマス!

<ツリコンは大盛況のうちに・了>

クリエイターコメント メリークリスマス!
 クリスマスをお届けに参りました。少しでも楽しんでくださると嬉しいです。

 今回のノベルで、NPCをお借りしました。各WR様、有難うございました。

 それでは、またお会いできるその時まで。
公開日時2011-12-24(土) 20:10

 

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