「こちらへ」 ウィリアムの先導で、ムジカ・アンジェロと由良久秀は、館長公邸の応接室に足を踏み入れる。アリッサとレディ・カリスは、すでに席についていた。 テーブルの上には、選び抜かれた紅茶が香りの良い湯気を放ち、きららかな宝石めいた茶菓も用意されている。しかし、彼らはお茶会に来たわけではなかった。「館長と後見人に於かれては、面会の申請を受諾いただき、感謝する」 すぐれた楽器のようなムジカの声音が、研ぎすまされた銘刀のごとく、しんと響く。 由良は無言のままだった。「お話をお聞きしましょう。どうぞお掛けください」 アリッサは、その表情も衣装も、いつもより格段に大人びていた。18歳という年齢と、館長職にあることを思えば、相応に、というべきかも知れない。「大まかな内容は、エアメールで伝えたとおりだ」「『世界図書館の管理体制の在り方を見直すよう、提言したい。必要があれば理事会(ファミリー)への不信任案提出も視野に入れている』ということでしたね」 カリスがゆっくりと頷く。髪を切ってからというもの、シックだが動きやすい服装をすることが多くなった彼女は、アリッサと並ぶと姉妹のようにも見える。「その提言の根拠について、ご説明いただけるかしら?」「ここ数年で次々とエルトダウン家のひとびとがターミナルを離れ、理事会を追放された。今や同家のファミリーはひとりもいない」「エイドリアン卿がおられない今、現状はたしかにそうなっていますが」「追放された前館長、エドマンド・エルトダウンの名誉は未だ回復されていない。それに対し、ロバート・エルトダウンの処遇は理事会解任だけで許されている」 紅茶には手をつけず、ムジカはしなやかな指をテーブルの上で組み合わせる。「さらには、エイドリアン・エルトダウンのターミナル出奔を引き起こした自警団は、未だに世界図書館から重用されている。――そもそもエイドリアン夫妻はなぜ、ターミナルから去ることになったのか。その理由さえ俺たちは聞かされていない」「それをあなたがたロストナンバーが知る必要がありますか?」」「エイドリアンの出奔は、事実上の『理事会脱退』だ。ロバートのときのように『わかりやすい』事例ならばともかく、エイドリアンは『ファミリー権限を返上しなければならないような罪は一切、犯していない』。理由が伏せられたままでは納得しかねる」「モラル頼みだけでは、どんな組織も立ち行かない。まして、理事会の扱いにならない事件を請け負うのが暴走傾向のある素人集団だけでは不安だ」 不信感を滲ませ、由良は吐き捨てる。 ネモの湖畔は、由良にとってはごくごく稀な、ターミナルにおいて、落ち着ける場所だった。 しかしそれは、エイドリアンとマリーがいればこそだ。 その場所は――永遠に奪われた。 身じろぎもせず、感情を交えず、しずかに、ムジカはことばを重ねる。「エイドリアン出奔については、公式に経緯をつまびらかにするべきと考える。これではまるで」 ――まるで、ベイフルック家がエルトダウン家を失脚させたくて全てを利用したように見える、と。 結果、ベイフルック家の専横となっている現状に対し、解決策は考えていないのか、と。「……エドマンド卿を復権させよと仰る?」「それだけでは不充分だ。今後、ファミリー以外にも世界図書館の運営を任せるつもりがあるなら、今がその時ではないか?」 同時に、と、ムジカは言う。「今後のターミナルの在り方について問いたい」 ――未だに司法機関や法整備は必要ないと言い張るのか。 ――今までと同じやり方で秩序が維持できると、本気で考えているのか。 ――ひとりひとりのモラルや善意に任せるとは言っているが、収監や討伐を決定するのが理事会なら、結局、司法の全権を握っているのもファミリーに他ならないではないか。 † †「趣旨はよくわかりました。あなたがたは、ご自身の喉元と私たちの喉元に、そして、おそらくは現在の全ターミナルに、同時に剣を突きつけておられる。その覚悟のほども」 カリスは、真っ直ぐにムジカの眼を見た。「まず理事会としては、『現体制が完全』と思ったことはただの一度もありません。この二百年、つねに模索中です」 現体制の問題点を指摘するロストナンバーは、この二百年の間、大勢いました。 彼らは口々に、さまざまな分野での改善をもとめてきました。 ですが「具体的な提案を持ってきた」り、「自ら行動を起こした」ひとは、ひとりとしていなかったのですよ。 ――自警団のかたがたを除いて。「自警団を特に重用しているつもりはないけれど、彼らには敬意を払いたいと思っています。あのかたたちは、自らの発案を自ら形にし、勇気をもって一歩を踏み出し、批判の矢面に立たされても、逃げ出さないでいるのですから」 それはそれとして、と、カリスは、冷めた紅茶をひとくち飲む。「不信任案の用意がおありなら、受け入れるにやぶさかではありません。なぜなら『ルイス卿を取り逃がし、結果的にターミナルに災いをもたらした』のは私たちに責任がありますので。『ルイス卿を脱獄させた犯人も捕らえられずじまい』です。その責は私たちが負うことになるでしょう」 館長はどう思われますか? と、カリスはアリッサを見やる。「ベイフルック家の専横……! 素敵!」 アリッサの表情に、抑制しきれない、明るい茶目っ気が浮かぶ。 「私たち、すごく悪い女みたい」 「アリッサ、これは喜ぶ局面ではなくてよ」 「ごめんなさーい」 アリッサはにっこりと微笑んだ。「だいたい同じ意見よ。実はとってもいいタイミングだと思いました」 由良が、ぴくりと眉を動かす。 ……何なんだ。 不信任案を叩きつけられようとしているのに。 おまえたちの世界図書館運営は綻びだらけで信用ならないと言われているのに。 何故、そんなにしたたかな笑みを浮かべているのか、この女たちは。 「ねえムジカさん。ムジカさんが指摘した問題を解決できる案を、まとめてもらえない? 完璧なものでなくてもいいけど、この街をよりよいものにしていくための、具体的な行動を一緒にしてほしいの」「それは」「『それは理事会が考える事』って言われたら返す言葉はないけど、でもね」 ――私たちが密室で考えつくことには、限界があるわ。「ムジカさんだってそう思うから、こうして行動してくれたのよね? もちろんムジカさんひとりに押し付けるつもりはないのよ。ターミナルの住人に広く意見を募ります」 ムジカさん、一緒にこの街を変えていきましょう? 集まった提案を、もとにして。 † † 動く。 動き始める、 停滞し続け、いびつに病んでいた街が、うねりを上げて、大きく――=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>ムジカ・アンジェロ(cfbd6806)由良久秀(cfvw5302)アリッサ・ベイフルック(cczt6339)エヴァ・ベイフルック(cxbx1014)=========
ACT.1■法と倫理 明るく落ち着いた笑みを浮かべる少女館長を、カリスは頼もしそうに見やる。その微笑は、我が子の成長をうれしく思う母親のようでもあり、困難な状況に立ち向かうための相棒を得た冒険者のようでもある。 『ベイフルック家のおてんば姫』たちを、由良はうっそりと不機嫌に睨んだ。 「あんたたちは、何でそんなに嬉しそうなんだ。図書館運営の責任を丸投げ出来そうだからか?」 にぶく重い脱力感とともに、彼はことばを吐き出す。 「俺は、見知らぬ人間の心ひとつで矛先が左右される治安維持が不安だった。一番ターミナルがどうでも良かったのは、綻びを自覚しながら放置したあんたらだろ。こっちは訳が判らないまま異世界に放りだされた、横の繋がりも何もない旅人だ」 「由良のことばは過激かも知れないが、おれの本心でもある。責任なら共に取ろう」 彼ひとりを矢面に立たせるつもりはない、と、ムジカは言う。 大きく頷いたアリッサは、じっと――由良を見つめた。 「……由良さん」 大きなはしばみ色の瞳でひたと凝視された由良は、その意味がわからず、困惑のあまりに視線を外す。 「……?」 「んもう、由良さんたら」 「なんだ」 「策士ね」 「……何のことだ?」 「自警団を責めるみたいなことをわざとキツく言っちゃって、ターミナル中が無関心ではいられないようにしたでしょ? 今回のような申し立てをする場合、真っ先に戦わなければならないのは自警団でも私たちでもない。多くの旅人に顕著な『よくわからない。関わりたくない。そんなことはどうでもいい』という醒めた感情だもの」 「俺の言い草がひどいのは仕様だ。そんな高尚な意図はない」 由良は大きく息を吐く。 「だが、自警団に文句を言うためにわざわざ来たわけじゃないというのは、そのとおりだ。ファミリーへの誤解と偏見、無関心、あるいは過剰な思い入れ。それはロストナンバーが等しく負っている罪だろう」 ――そして、俺たちの罪でもある。 「あのとき、誰も何も言わなかった、とは、おれは思わない。たしか虎部隊員が『ロバートを信じるわけにはいかないのか?』という趣旨の提案をしたと聞き及ぶ。それでもなお、自警団の方針は揺るがなかった」 ムジカは目を閉じ、静かにことばを繋ぐ。 「おれたちがこんなことを言える立場にはないことは、わかっている。よりによっておまえたちが『それ』を言うのかと思われるだろうことも。『後出し』に関しての強い批判も当然、あるだろうと思う。それも含めて、言わずにはいられなかった」 ――何もかも終わったあとで、それを言ってどうする。 そう思うひとびとは多いだろう。 「それでも、言わずにはいられなかった」 音楽的な声が、穏やかに流れる。 「おれたちがもし、黙ったままだったら。あのときタイミングを逸してしまったのだからもう仕方がない、このままあきらめるべきだと思ったなら」 誰も、無関心が罪であることを意識しない。 エイドリアン夫妻がターミナルを去ったことにさえ、大多数のロストナンバーは気づかないままではなかったか。 不信と反感だけは表明しながらも、ほとんどのロストナンバーはファミリーがどうしようと気にしないではないか。 ファミリーに対してだけではない。 一部のロストナンバーが暴走し異世界の過干渉を行っても、その経緯や影響の残酷さに関心を持たないではないか。 明確な犯罪に対して、厳正な裁きと処罰が行われたかどうかさえ、確認しようとしないではないか。 かつてアリッサが館長代理で、エドマンドが行方不明であったころ。 ロストナンバーたちは『館長のゆくえになど興味はない』と言っていた。 それに象徴されるように、無関心の鎧で、ロストナンバーたちは自身を護っている。 その心理は、おそらくは―― 恐怖なのだろう。 対象にきちんと向きあうことへの、恐怖。 それは他者への恐怖ではない。誰かと対立することの恐ろしさでさえ、ない。 自分自身の心理や行動に深く深く分け入らなければならない、恐怖だ。 「良かれと思って活動してきた彼らに、不快な思いをさせるだろうことは覚悟のうえで、自警団批判の論調から始めたのは、それがそのまま理事会への不信任案に連動していくからだ。そうは意識していないだろうが、自警団は『ターミナルの矛盾』を押し付けられていると感じる」 すべての原因は、この街に、厳正な立法がなされていないことだと思う、とムジカは続ける。 「何故、自警団はファミリーだけを捜査対象にしたのか。それは無意識のうちに『同じ立場のロストナンバー』と事を荒立てたくない、ロストナンバー同士で対立したくない、と思ったからではないだろうか。だが、ロバートであれエイドリアンであれあなたたちであれ、ファミリーならば『仮想敵』として適切だ。自警団側もそうでない側も一丸となって『安心して』『ためらいなく』断罪することができる。あの捜査は『そういうこと』ではなかったか」 罪を――過ちを犯したのならば、罰せられるのが当然だ。 あなたたちの言う「脱獄幇助犯」は、罪の発覚以降、逃げも隠れもしなかった。 ただ断罪の手を待っていた。 だが――、 誰も《彼》を糾さなかった。 何故あのとき、誰もそれを指摘しなかった? 《彼》に責任があると解っていたならば。 「法が必要だ。たとえ仲間であろうと友人であろうと恋人であろうと、厳正に冷酷に、裁きの俎上(そじょう)に乗せることが可能な法が。それがないから『仮想敵』の糾弾へと矛先を逸らすことになる」 「そういう意味では、私たちは全員、共犯者なのかもしれませんね。自警団も、彼らの行動をただ見守るだけだった私たちも、そして、あなたがたを含めた、すべてのロストナンバーも」 カリスは低く言う。 「いわば『現在のターミナル』が、エイドリアン卿ご夫妻を放逐したのだと言えるかも知れません」 ACT.2■罪と罰 改めて、全ターミナルの住民が意見を出せる場を作ってくれた事に感謝する。 ――おれたちの言葉だけでは、街を動かす事はできないだろうから。 ムジカは、そう前置きした。 「おれは法律のスペシャリストでもないし、行政に携わった事もない。寧ろその対極に位置する人間だとも思っている」 だが、だからこそ。 何を恐れることもなく、ものが言える。 「おれは自らの身をもって、この街に秩序がないことを証明したい」 「あなたは――」 カリスの瞳が、冬の湖の鋭さを帯びる。 「ご自身の糾弾を、求めているのですか?」 「……。この街には、おれの罪を糾弾できるだけの下地がない」 「そうね」 「それは権力を持ちながら、何の体制も整えなかったあなたたちの怠慢だ」 だからおれはここへ来た。 処分を受け容れる覚悟と共に、理事会の責任を追及する。 † † 「……今さら、過去の事件ひとつを取り上げるのも恣意的な処罰じゃないのか?」 ムジカの決意に、しかし由良はぼそりと口を挟む。 (流石に監獄まで付き合うのは遠慮したい) 「それについては、まったく由良さんの仰るとおりだと思います」 カリスは含みのある笑みを浮かべた。 「事後に制定した法律を『脱獄幇助犯』に適用するのは、法律不遡及の原則に反します」 「そもそも、何らかの変革を行うにあたり、二百年という時間はそんなに短いのか」 眉間にしわを寄せたまま、由良は言う。 「他のファミリー、例えばダイアナ夫妻が障害だったのかもしれないがな。ここに至って過去に言及しても仕方ないんだろうが、どうして今まで、ファミリーの誰も声をあげなかったのか不思議だ」 「変革を求めたファミリーはいました。法整備という方向ではないにしても。チャイ=ブレの呪縛を解こうとして異世界への旅を続けたのがエドマンドであり、『ファミリー主導ではなくロストナンバー視点で』革命を行おうとしたのがヘンリーでした」 「それが成功しなかったのは何故だ?」 「アリッサを除く、他のファミリーが弾圧したからです。もちろん私もそうですし、かつてのロバート卿も」 「どうして」 「彼らの行為は、あまりにもリスクが大きいと判断しました。すべてを護ろうとしてすべてを失う懸念があったのです。その後ロバート卿が、彼らとまったく同じ轍を踏んだのは皮肉としか言いようがありませんけれども」 「カリス。あんたの云う良識は偏見のことか」 「どういう意味でしょう?」 「他人の正義感など理解できないモノだ。命が平等だとは口が裂けても言わないが、個々人が別の良識を持ち合わせ、自分以外の事に無関心になる場所だからこそ、明確なルールが必要なんじゃないのか」 もどかしそうに言葉を探る由良の、何かを堪えている様子に、カリスは目を細めた。 「……灰皿を用意しましょうか?」 「いらん」 にべもなく、由良ははねつける。 ACT.3■正義という幻想 「『法』は、その定義から難しい問題をはらんでいます」 息を吸い込み、カリスは、ムジカと由良を交互に見る。 「法には『自然法』と『実定法』があります。 自然法は、政府などが法を制定する前から自然に存在するとされる法。 自由権や平等権などの自然権を保護するものです。ですから、『ターミナルがモラル頼みだけの無法地帯という認識は正しくありません』。しかし、今問われている『法』とは実定法のことでしょう。つまりは、『社会生活を規律する規範であり、国家権力等による強制的裏付けのある規範』ということになります」 「そうだな。その『強制』が、どこまで適切に行われるかということだと思うが」 「壱番世界の学者のひとりは、こんなことを言っているわ。『強力な法律を作って義務として強制しようとすればするほど、人々は責任を他人に転嫁して逃れようとする。法を積極的に順守するよりも、法による制裁を逃れさえすればよいという消極的な対応になりがちである。 そこに法の空白部分が生じる』と」 「それは、そうかもしれない」 「こうも言っているの。『法とモラルは補完関係にある』」 † † 「あ」 アリッサが、トラベラーズノートを開く。 ムジカと由良の呼びかけに呼応したひとびとから、次々に、意見が寄せられてくる。 それらは、熱くほとばしる激流のような想いであったり、冷静で現実的な提案であったりした。 「見て、ムジカさん、由良さん。こんなにたくさん……!」 † † 意見案のひとつひとつを、ムジカは丁重に読む。 やがてその瞳が、大きく見開かれた。 彼はしばらく、無言で額を押さえる。 そして。 息を吸い、息を吐き、言の葉を響かせる。 「現状維持の意見が大勢を占めるのではないかと、実は思っていた。皆、『旅人』なのだから、ターミナルの動向に無関心なのは仕方がないのかもしれないと、思ってもいた」 ――けれど。 感情的にならずに冷静に受け止め、考え抜いた意見を、誠実に寄せてくれた。 皆に、素直に御礼を言いたいと思う。 ――ありがとう。 † † 「……やはり、灰皿をもらおうか」 由良が、眉間のしわを深めた。 「少し、待ってらして」 ウィリアムを呼ぶのかと思いきや、カリスは自ら席を外し、灰皿をたずさえてきた。 「どうぞ、由良さん」 「……、どうも」 「お疲れ様」 ついぞ聞いたことがないようなやさしい声で、 ついぞ見たことがないような素晴らしく魅力的な笑顔で、 カリスは言った。 お疲れさま、と。 「ムジカさんも、お疲れ様。大変なご負担をおかけしましたね。有意義なご意見を多くいただきましたので、この先は、私たちの仕事とさせていただきます」 「取りまとめただけで終わらずに、具体的な反映をしていくことを望む。世界司書やロストナンバーの代表者を集めて委員会を立ち上げるなど、何らかの行動を起こすと約束してくれ」 「ええ。それは、もちろん」 † † 『この街は悪意では覆せない、だからおれはあなたとは違う路を往く』 エドガー、これがその答えだ。 あなたが茶番と嗤ったこの街を、おれは変える。 ――ギリシャ神話における正義の女神アストライアは、人類の悪行に絶望して地上を去ってしまったけれど。 だが。 武器を手に、血と殺戮にまみれた世界を作っていたはずの、どうしようもない人類が。 彼女が見捨てた人間たちが――もしも彼ら自身の手で秩序を取り戻したとしたら。 その逆転劇に、正義の女神は何というだろう? ACT.4■アイスブレイク 「それでは私たちは、別室で意見案を取りまとめます。今後の方針が決定次第、おふたりにもご報告しますが――」 「一息ついたらお寿司の出前、取ろうと思うの」 アリッサは、満面の笑顔で問う。 「ねえ、ムジカさん、由良さん」 お寿司のネタは……、何が好きかなぁ? ――Fin.
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