クリエイター淀川(wxuh3447)
管理番号1184-10381 オファー日2011-05-08(日) 16:56

オファーPC サシャ・エルガシャ(chsz4170)ロストメモリー 女 20歳 メイド/仕立て屋
ゲストPC1 シィーロ・ブランカ(ccvx7687) ツーリスト 女 17歳 半獣半人

<ノベル>

 ある晴天のブルーインブルーにて。

 「はーなーしーてー!」

 そう大声を上げるのはメイド服姿の健康的な女性、サシャである。彼女は今……海に居る。そして図体のでかい海賊の肩に担がれているのであった。

 「放したって逃げれるようなところなんてないんだぜ? おとなしくお頭の接待をしてろ!」
 「い~や~で~す~!」

 ジタバタと肩の上で暴れるサシャであるが喧嘩や暴力が日常茶飯事な海の盗賊にはポコポコパンチは微塵も効かない。

 事のあらましはこうだ。
 ブルーインブルーに魚などの海鮮類を買出しに来ていたサシャ。そして大海原を見ながら仲の良い人たちとシーフードバーベキューをするはずだった。買い物ぐらい一人で大丈夫だ、そう言って買出しに出たのが運のつきだった。たまたま通りかかった酒場から出てきた(いかにもスケベそうな腹回りと顔の筋肉が緩みきったやたらと鼻息の荒い中年の)海賊のお頭とばったり出くわしてしまったからさあ大変。そのスケベそうな……以下略のお頭はサシャを見て、

 「こりゃあ元気な金髪の健康的な肌のお嬢さんだ! よし、99人目は決まりだ!」

 そう高らかに叫ぶと周りに居た同じ船の海賊と思しき男たちが拳を高らかに突き上げて獣のように叫びを上げた。無論、この時サシャは一人置いてけぼりを食らっていたわけだが。

 「だ~か~ら~ぁ! ワタシは人を待たせてるんですってばぁ! 他を当たってくださいぃぃ……」

 語尾が徐々に小さくなっていく。自分ひとりならばガーネシャと共に時間をかけてでも脱出しようと試みるところなのだが、今回は待っている人たちが居る。心配も時間もかけたくない……と思っても如何せん状況を打破出来そうに無く、船に乗せられ肩から下ろされるまではしばらくポコポコパンチを繰り返していたのだった。


 一方その頃、その待たされている一人のシィーロはサシャが中々帰ってこないため心配になって街中を捜索していた。市場、住宅街、商店……聞き込みを続けていると、前方を歩いていた海賊たちが話しているのが聞こえてきた。

 「いやー、お頭は相変わらず美女を呼び寄せる運気を背負っているな!」
 「確かに、今回の金髪の女子は可愛いもんなぁ」
 「え、お前らああいうガキがタイプなの?フリフリの服着てるような……」
 「可愛いは最強だからな」

 「詳しく教えろ」

 抑揚の無い、若干ドスの利いた声が海賊たちの後ろから聞こえて来た。恐る恐る振り向くと……。


 港から出航して早一時間。サシャは本当に困っていた。それは困るだろう。待たせている人が居る。しかも買い物一人でできるもん発言をした上、結局一人で買い物すら出来ていない。さらに上乗せで厄介ごとに巻き込まれてしまっているのだから。頭を抱えるか泣き出したいほどの災難である。こんなことさえなければちゃんと一人でできたもん!と言いたいくらいに。
 そしてそんな事をお構い無しなのがお頭である。

 「おい新入り妻! 酌をしろ!」
 「つつつつつつ妻ぁ?!」

 肩に背負われていたときも聞いた気がするが、妻ってあの結婚とかしたらアレでソレで……。

 「いつそんなことになりましたかー! ていうか船に連れ去っちゃったら現地妻じゃないよー!?」

 混乱と恐怖と嫌悪感で言い方が怪しくなってしまった。そしてその言葉にお頭が返答する。

 「バカ野郎、嫁は別にいらねぇ。 あくまで俺は現地妻を100人作りたいだけだ! なぁ野郎共!」

 そのとんでもない答えに数十人の海賊たちが雄叫びで呼応する。

 「さっすがお頭!」
 「型っ苦しい女房なんざいらねぇやなぁ!」
 「ひゃっほう! 現地妻! イイ響き!」
 「分かってるよな! 俺は一生アンタについてくぜー!」
 「お頭愛してる!」

 サシャは頭を抱えるしかなかった。ダメだこいつら女心をわかってねぇ。そう思いながら。

 「だからつべこべ言わず酌をしな! 船の上だから逃げ場はないぜ?」

 確かに、現状をどうやって打破すべきか、サシャは解決の糸口を見つけられていなかった。


 同時間、海賊の船に向かって、小型の船が1隻向かっていた。船頭に居るのはシィーロ。そして操縦しているのは先ほどの海賊たちである。

 「あ、アレがお頭の船ッス」
 「良くやった。 もう少し近寄ってくれ」

 振り向きざまに喉仏に爪を当てて相手の生命を掌握する。そうすれば大体の人間は降伏せざるを得ない。その方法で小型船を漕がせ、母船までたどり着いたのである。そして、とうとう乗り込める距離まで船を着けさせる。

 「じゃあ、お別れだな。 降りろ」
 「へっ?」
 「降りろ、と言っている」

 ゴーアウェイ。親指を立て横一文字を切る。無論、陸など無い。

 「海に、落ちろって意味ですかぁ?!」
 「落ちろ、ではない。 降りろと言っている」

 結局同じじゃないか、と言いつつも自分の身が大切なのかそそくさと船から海へとダイブしていった。正直海も結構危ないと思うのだが安全的な意味でシィーロ>海と言うことらしい。

 「さて……今助けに行くぞ、待っていろ」

海賊がある程度離れたのを確認するとシィーロは単身船へと乗り込んでいった。


 船の上ではどんちゃん騒ぎが始まっていた。甲板で海賊全員が集まり、杯を交わす。記念すべき100人目の一歩前まで到達したのだから無理もない。年齢で言えば白寿である。それはもうめでたい。飲めや歌えやのお祭り騒ぎである。そんな記念すべき99人目のサシャに見張り役の海賊たちは実に下賎な問いかけやセクハラを働くものだからサシャは参ってしまう。どんなにやめてくれと訴えても聞いちゃくれない。ああ、誰か助けてくれないだろうか……と涙目になっていたそのときである。奥のほうから海賊の悲鳴とどよめきが聞こえて来たのは。

 「待たせたな。 戻るぞサシャ」
 「シィーロ様!」

 コートをなびかせ一直線に助けを待っているサシャに向かっていく。通り道に居る海賊は全部その鋭い爪でなぎ払いながら駆け抜ける。さながら一閃の稲妻の様である。しかし、その前に屈強な海賊が立ちはだかると、距離を保ちつつ足を止めた。

 「銀髪をなびかせる獣耳の女性……決めた……決めたぞ、お前が100人目の現地妻だ!」

 そう高らかにお頭が叫ぶと屈強な男たちは一斉にシィーロに襲い掛かる。シィーロはソレを大跳躍で回避し、

 「私を妻にしたくば倒してみろ」

 と、言いながら海賊の頭を一蹴し、さらにサシャへと近づく。先ほどまでは使わなかった牙を使い、さらに殲滅スピードが上がる。バタバタと薙ぎ倒されていく海賊たち。

 「がんばって~シィーロ様!」

 遠巻きから見ても圧倒的な強さを見せるシィーロの応援に熱が入るサシャ。はっ、と思い立って、

 「微力ながらお手伝いを……!」
 「あっつぃあッ?!」

 戦況を見ていた見張りの手にこっそりあっつ~い入れたての紅茶を注いで、さらにもう一人の見張りを飾ってあった万国旗で巻き上げる。そこら辺にあった樽を転がしたりして邪魔をすると甲板の上はさらに大混乱である。
 流れは一方的だった。シィーロの獣人たる身体能力と鋭い爪と牙の前に海賊たちはなす術がなかった。さらにサシャの予想外の攻撃に対応しきれない、と言った感じだった。

 「さすがシィーロ様! かっこいい~!」
 「こんなものか……っ?!」

 当たるはずだった海賊が先に崩れ落ちたため本来空を切るはずの爪が誤って帆を切り裂いてしまった。まずい、と思ったときには帆を支える柱はメキメキと音を立てへし折れた。その先には……

 「う、うそ……」
 「危ない!」

 ドスゥ……ンと倒れた柱に……二人の姿は無い。サシャをお姫様抱っこしたシィーロは緊急用の筏に飛び乗っていた。めったに無いシチュエーションにドキドキするサシャ。……だったが、倒したはずのおお頭の声が船から聞こえてくる。

 「諦めん、諦めんぞおおお! お前を100人目の現地妻にするまではああぁぁ……! 俺は何度でも蘇ってやるぞおおぉぉ!!」
 「くどい」
 「大体99人目にもなってませ~ん!」
 「今の危機的状況を脱することを始めないのだろうか」

 柱が倒れ、沈み行く海賊船を見守りながら二人はすっかり出来て居なかったシーフードバーベキューの食材の話し合いをするのだった。

クリエイターコメントこの度はオファーありがとうございます。
ハチャメチャにやっても良さそうな内容だったのでわくわくしながら書けました。さらには捏造OKまでありがとうございます。書き易かったです。かっこいい女子と可愛い女子が書けて幸せ者です。

お気に召したら幸いです。またご縁がありましたら宜しくお願いいたしますね。
公開日時2011-06-09(木) 22:10

 

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