「ヘンリー&ロバート・リゾートカンパニー」は、より純粋に「異世界への旅」を行うことで、一人でも多くのロストナンバーに、外へ出る機会を与え、お互いの交流や、それぞれの旅の目的への意識を高めさせることを意図しているらしい。
そんな彼らが拾ったのは、こんな声だった。
あちらは旧暦だから、七夕だってこれからなんです!
それに壱番世界ほど猛暑じゃないし、夕涼みの川遊びとか凄い風情があるって聞きました!
優雅な夏休みをすっごく堪能したいので、是非夢浮橋の夏の行事を堪能しに行きたいです!
そして雅なる絵巻物・夢浮橋出身の夢幻の宮へ聞き取り調査が行われ、ツアーを行うことが決定したのである。
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夏は夜――そう語ったのは壱番世界の女性だ。
夢浮橋も季節は夏である。だが現在の壱番世界・日本よりは涼しい。
川のそばであれば、視覚や聴覚への刺激も相まって更に涼しく感じるかもしれない。
「とある川のそばに、蛍の宿(ほたるのやどり)といわれる建物がございます。大きなお屋敷で、普段は貴族の方々が訪れることもございます」
夢幻の宮が言うには、その建物からは晴れていればよく星が見えるという。
また、近くにある川まで出れば、蛍の舞う幽幻な様子を見ることも出来る。
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「折しも時は乞巧奠(きこうでん)――七夕でございます。この日、宮中では儀式が行われますが、蛍の宿では織女に対する願掛けと祈りの時間として過ごします」
七夕の夜、蛍の宿の庭に机を出して供え物を置き、牽牛・織女の二星を祀る。
牽牛・織女の二星会合を願うだけでなく、女性の針仕事の上達や、染織、書道、詩歌、音楽などの技芸が巧になるよう願われる。
とくに針仕事の上達を祈るには、ヒサギの葉に金銀の針をそれぞれ7本刺して、5色の糸をより合わせたものを針穴に通す。
また、願い事はカジの葉に書いて成就を祈るのだ。
満天の星空で二人が出会うことを祈り、また願いをかけるのも良いだろう。
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夜が明けたら、日差しも強くなる。
川で遊ぶのはどうだろうか?
澄んだ川の水は冷たくて、岩場に腰を掛けて足を浸すだけでも気持ちがいい。
勿論、川の水は綺麗で飲むこともできるので、清水で喉を潤すのもいいだろう。
「蛍の宿りには氷室がございます。天然氷をけずって、蜜をかけた氷蜜は格別にございます」
他にも川で冷やした野菜や果物を頂くのもよいだろう。
蛍の宿に旅の商人が立ち寄るというから、この世界らしい小間物などを買い求めることもできるだろう。
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夜、曇りがちになってきたら、川辺に出るといい。
蛍たちが、幻想的な光景を作り出している事だろう。
「蛍の宿の名の通り、蛍狩りの名所にございますれば、幻想的な光景の中過ごすことも可能でございます」
大騒ぎせず、静かに蛍の光を眺めるのであれば、その幻想的な光景を楽しむ事を許されるであろう。
蛍はとてもデリケートな生き物なので、脅かしては来年以降その姿を見ることができなくなってしまうかもしれないので、そこは注意してほしい。蛍の集まる草むらに押し入ったりしなければ、もしかしたらあなた達の手にそっと、蛍の光が舞い降りるかもしれない。
「蛍狩りに出る時は、川辺に近づいたら明かりを消してくださいませ。カメラのフラッシュもご遠慮くださいませね」
偽物の光で蛍を怯えさせないよう、注意して鑑賞してほしい。
源氏蛍の黄色の光、姫蛍の桃色の光、さまざまな光があなた達へロマンティックな時間を与えてくれるだろう。
「この世界のほんのひと欠片ではありますが、皆様に夢浮橋の夏を堪能していただければと思います」
そっと、案内役を引き受けた夢幻の宮は微笑んだ。
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!注意!
パーティシナリオでは、プレイング内容によっては描写がごくわずかになるか、ノベルに登場できない場合があります。ご参加の方はあらかじめご了承のうえ、趣旨に沿ったプレイングをお願いします。
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