飛んで！世界遺産：第２ターン

ノベル

　シェイムレス・ビィたちの行方は杳として知れなかった。
　だがロストナンバーたちの執念――もとい頑張りも凄まじかった。まだ開始して早々だというのに、すでに世界遺産の半分を潰してしまったのだ。
　着実に、包囲網は縮まっていると言えよう。

　たとえ、少なからぬロストナンバーたちが、なかば観光感覚で参加していたのだとしても、だ。

「カンタレラ、どこだーい？捕まえるよー」
「きゃー！もー！水がかかって冷たいのだ！」
　うふふ。あははは。
　クージョン・アルパークとカンタレラが波打ち際を駆ける。
　太平洋の水平線はどこまでも青く、南方の日差しはさんさんと降り注ぐ。日除けのパーカーのフードがつくる影のしたで、三ツ屋 緑郎は目を細めた。
「美しい海だ。ここが『負の世界遺産』とは」
　と、フブキ・マイヤー。
　ここ、マーシャル諸島のビキニ岩礁が世界遺産に登録されたのは、かつてこの場所で行われた核実験の記憶を後世にとどめるためでもあるという。
　今では、すっかり美しい景観を取り戻しているが、島にはかつての軍事施設の廃墟も残されている。
　そのようなことを知ってか知らずか、三池 幸太郎があてどなく浜をうろついており、遠く、深槌 流飛の寡黙な姿も見える。
「人は愚かだけど悲劇を乗り越える力もあると信じようじゃないか……」
　クージョンがつぶやき、真剣な面持ちで、カンタレラが頷く。
　というか、さっきまで楽しげにビーチで追いかけっこをしていたのは誰だ。

　　＊

　そんなビキニ岩礁からはるかに距離をへだてた、北欧、スウェーデン。
　荒涼とした平原がどこまでも続く、寂しげな情景は、エーランド島南部の農業景観として世界遺産に登録されている場所だ。
「ううっ、ここはずいぶん涼しいよ」
「それに地味な場所ね。ま、ここは候補地から外して正解だわ」
「でもこういうところに、案外、面白い『歴史』が埋まっていたりするんだよ」
「壱番世界が豊富に『歴史』を埋蔵している世界なのはわかっているわ。だからこそ、選ばれたんだもの」

探索結果一覧

戻る